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スタジアム農園で食育 世代超え地域住民で野菜づくり J1ヴィッセル神戸試み


スタジアム農園で食育 世代超え地域住民で野菜づくり J1ヴィッセル神戸試み ノエビアスタジアム神戸の農園で収穫したサツマイモを手にする子どもたち=11月、神戸市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「サツマイモ!大きい!」「あっ、カマキリや!」。秋晴れに恵まれた11月のある日。ノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区)の敷地内にある畑で、子どもたちの歓声が響いた。都市型のシェア農園を運営するのは、同スタジアムに本拠を置くサッカーJリーグ1部のヴィッセル神戸。今季初優勝したクラブのユニークな試みは、地域住民が中心となった食育プログラムにつながって実を結びつつある。

 Jリーグのスタジアムで唯一という「付属農園」は、一人のクラブ職員のアイデアから生まれた。2020年、地域とのコミュニケーション業務を担当する米澤崇マネージャー(49)は、新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受けて在宅勤務が続いていた。「自宅近くを散歩していたら、農園が家族連れでにぎわっていた。ノエスタにも空き地がある。できるかも」

 行動は早かった。ノエスタ所有者の神戸市に相談すると「OK」の快諾を得た。その年のうちに工事を開始し、21年春には24区画の農園が完成。利用希望者を募って営業をスタートした。

 大工場と住宅が立ち並ぶ周辺の和田岬地区は高齢化と少子化が進む。地域住民の交流や情報発信を推進する和田岬まちづくり協議会は「子どもの食育や世代を超えた交流のために」とノエスタ側と話し、今春2区画を使った食育を始めた。

 協議会の担当者は、近くでたこ焼き店を営む井上隆宏さん(37)と近隣住民の川中美咲さん(40)。22年秋ごろから運営プランを練った井上さんは「各年齢層の20人ほどが参加している。高齢の方から育て方を教わったりして会話が生まれている」と話し、交流の輪が広がっていることを実感する。参加者が定期的に集まり、水やりや雑草抜き、収穫を行っている。

 育てる野菜はサツマイモのほか枝豆、キュウリ、シシトウ、トマトなど約10種類。川中さんは「子どもたちは野菜や魚はスーパーに並んでいる姿しか知らない。種をまいて実がなる。その過程を学んでほしい」とプログラムの意義を強調した。

 土をいじって汗を流した三浦照汰君(9)は「みんなで育てて、みんなで食べたらうれしい」と笑顔。Jリーグは「地域に愛されるクラブ」を目指しており、米澤さんは「住民の健康に結びつき、喜んでいただければJリーグ的(な理念)にも合う」と話す。スポーツクラブと連携した地域活性の好例として、全国のチームや自治体の参考になりそうだ。
(共同通信)