「会いたい」悲しみ今も／北新地ビル放火２年／遺族ら２６人悼む

　２６人が犠牲となった大阪・北新地ビル放火殺人事件の発生から１７日で２年となり、遺族や元患者らが現場で献花し、手を合わせて悼んだ。「娘に会いたい。返してほしい」「生きる光を与えてくれた人だった」。放火した男は既に死亡しており、動機は解明されていない。大切な人を奪われた悔しさと悲しみは今も癒えずに募るばかりだ。
　「一日たりとも娘を忘れたことはない」。３０代の娘を亡くした５０代夫婦は声を詰まらせた。娘は親孝行で交友関係も広かった。母は「これからの人生だった。未来が奪われた」と涙を流した。息子が巻き込まれた女性は手を合わせ「ショックで、まだ夢の中にいる」と言葉少なだった。
　亡くなったクリニック院長の西沢弘太郎さん＝当時（４９）＝の妹伸子さん（４６）は兄と同じく、悩む人に寄り添うため仏教を学び、現場で約２０分間お経を読み上げた。昨年のこの日は現場に来ることができなかったとして「やっと来られた」と語った。
　院長は多くの患者から慕われていた。大阪市の男性会社員（４３）は「生きる光を与えてくれた人。かけがえのない居場所がなくなり放心状態だった」と振り返った。大阪市のアルバイト淡路健太さん（３８）は当日の午後に診察予定で「院長に前向きな報告ができるよう努力していた。苦悩している人の手助けをしたい」と話した。
　ビル入り口の扉にはチェーンが巻かれ「立入禁止」との貼り紙が残ったまま。冷たい風が吹き付ける中、ビル前には白やピンクの花束が手向けられた。