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ペット「再生」させます/中国、クローンビジネス拡大/1匹数百万円、生命倫理議論も


ペット「再生」させます/中国、クローンビジネス拡大/1匹数百万円、生命倫理議論も クローンペット誕生の流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「あの子にもう一度会いたい」―。ペットブームに沸く中国でペットを亡くした飼い主のためにクローンをつくるビジネスが広がる。北京のベンチャー企業は約500匹の犬猫をクローンで再生させた。1匹数百万円と高額にもかかわらず依頼が殺到。クローンペットに規制はなく生命倫理を巡る議論も呼んでいる。
 白いしなやかな身体に茶色いしっぽ。医療系基金に携わる林雷さん(38)の北京市郊外にある自宅を訪れると、来客に驚いた雌猫の小黄(シャオホワン)が勢いよく階段を駆け上がった。林さんは「初代小黄と配色も寝そべる姿もそっくり」と目を細める。
 娘のような存在だった保護猫の小黄が食中毒のような症状で死んだのは2019年12月。衰弱していく愛猫を見ながらクローンペットを思いつき、死後すぐにベンチャー企業「北京希諾谷生物科技(シノジーン)」に連絡。20年11月にクローンの小黄が生まれた。
 クローンをつくるにはペットの皮膚などから採取した体細胞を、核を取り除いた未受精卵に融合させ、代理母の子宮に入れて妊娠、出産させる。
 「遺伝子は元のペットと99・9%以上同じ。育つ環境が一緒なら性格も似るし、健康面も問題ない」。シノジーンの米継東会長(45)は話す。
 同社は12年に創業。17年に最初のクローン犬を誕生させ、18年から一般向けにクローンビジネスを始めた。価格は犬が5万ドル(約700万円)、猫は4万ドルからで顧客の8割は中国人。日本からの依頼も約10件あった。
 警察犬や野生動物にも手を広げ犬を代理母として希少なホッキョクオオカミのクローンを誕生させた。「種の保存にも有効」と強調しパンダのクローンにも前向きだ。
 中国ではクローン人間は禁じられているが、動物のクローンに明確な規制はない。流産や死産の割合が高いとされ、成功率は「30%程度」(米会長)。クローン1匹をつくるのに平均3匹の代理母のほか、卵子を提供する雌も必要で「動物虐待だ」とインターネット上で非難が上がる。
 「ただ戻ってほしいだけ。人と同じ倫理基準をペットに求めるべきでない」。クローン誕生を待つ上海市の王一兵さん(55)は愛犬の写真をなでながら涙ぐんだ。(北京、上海共同=花田仁美)