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捜査違法に不服 都と国控訴/大川原化工機訴訟 社長側も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 生物兵器製造に転用可能な装置を無許可で輸出したとする外為法違反罪などに問われ、後に起訴を取り消された横浜市都筑区の「大川原化工機」の大川原正明社長(74)らが東京都と国に損害賠償を求めた訴訟で、都側と国側は10日、逮捕や起訴は違法だと認定し、計約1億6千万円の支払いを命じた東京地裁判決を不服として控訴した。社長側も控訴した。
 昨年12月27日の判決は、大川原社長ら3人に対する警視庁公安部の逮捕を「根拠が欠如していた」と指摘。東京地検の起訴も「必要な捜査を尽くさなかった」として、いずれも違法と判断した。
 訴訟の審理では、出廷した公安部員が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言する異例の経過をたどった。
 警視庁幹部は控訴理由について、公安部の捜査や取り調べが違法と認定されたことを挙げ「都の主張が十分に認められなかった」と説明。警視庁は起訴取り消しについて「真摯(しんし)に受け止めている。(公安)部内教養などを強化していく」とのコメントを出した。公安部に近く、捜査指導を担当する幹部を置くという。
 東京地検の新河隆志次席検事もコメントを発表。起訴について「その時点での証拠関係を前提に起訴相当と判断したものであり、違法とはいえないと主張してきた」「取り消しは真摯に受け止めている」とした。
 社長側は「冤罪(えんざい)の真相を一層明らかにするべく主張、立証を尽くす」とのコメントを出し、関係者は取材に「地裁判決の結論部分は評価できる一方、公安部の捜査の悪質性に関する認定が不十分な面がある」と話した。