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発達障がい児に“集団行動”をサポート 療育プログラム「ダイナミック・リズム」とは 沖縄


発達障がい児に“集団行動”をサポート 療育プログラム「ダイナミック・リズム」とは 沖縄 「ダイナミック・リズム」で歩きながら手をあげる参加者ら=6月、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 歩いて、走って、スキップする。周囲にいる人と手をつないで輪を作ったり、歩きながらグー、チョキ、パーと手を細かく動かしたり。かと思えば、静かに座り、話す人の声に耳を傾ける―。6月中旬、那覇市のともかぜ振興会館で行われた療育プログラム「ダイナミック・リズム(DR)」の一幕だ。見本となるスタッフの動きに合わせて、大人も子どもも身体を動かす。 (嶋岡すみれ)

 実施したのは、自閉症など発達障がい児の療育に取り組むコロロメソッド発達療育支援センター(那覇市、平良博子代表)。DRを「自分でよく考えて行動できる(自律動作)力」を養うことを目標に実施している。

 平良代表は「どんなに重い障がいがある子でも、社会参加できる力はある。その力を早くからしっかり伸ばしていくためにも、集団療育の場をうまく使うことは有効だ」とプログラムの意義を語る。

 「コロロメソッド」は、コロロ発達療育センター(東京都)の石井聖所長が独自に開発した療育プログラム。発達障がい児の社会適応のため、独自の歩行訓練や発語訓練などを実施している。自身も自閉症の息子がいる平良代表が2005年にコロロメソッド本部の地方教室として「コロロ琉球教室」を開設。13年にコロロメソッド発達療育支援センターとして独立した。沖縄では唯一コロロメソッドを用いて療育をしている。

 DRは同メソッドの特徴的な集団運動音楽療法。2時間のプログラムでリズム体操や人間教材、製作、静座、音楽鑑賞などを実施する。集団行動が苦手だと言われる自閉傾向のある子どもたちも、静と動を絶え間なく織り交ぜたプログラムに楽しく参加することで、行動リズムが次第に落ち着いていく。いずれは学校で教師の話を静かに聞くことができたり、運動会など集団で動く場面で同級生と同じ動きができるようになったりするという。

 平良代表は「社会で生きていくためには、人をよく見て、人の気持ちが分かるようになることが大事だ」と話す。そのためにはDRのように周囲の人と協力し合ったり、人の様子を見て行動したりする練習の積み重ねが必要になる。「彼らはやがて自分の力で生きていかないといけない。できることを増やすことで、社会参加の幅は広がる」と力を込めた。


マレーシアから研修に サバ州の特別支援教育施設職員 ビリーさん、ハナフィさん スキルと能力磨きたい

サバ州の州旗を持ち笑顔を見せるプレスリー・ビリーさん(右)とハディ・ハニフ・ハナフィさん=6月、那覇市

 DRには、マレーシア・サバ州でコロロメソッドを実践するセリメンガシセンター(特別支援教育施設)の職員、プレスリー・ビリーさん(35)とハディ・ハニフ・ハナフィさん(31)も参加した。6月中旬から約1カ月間、沖縄と東京でコロロメソッドを学ぶ研修のために訪れた。

 同センターは1981年にサバ州で初めて、特別な支援が必要な子どもたちのための施設として設立された。20年前からコロロ発達療育センターのスタッフが実地指導を行ったり、マレーシアから研修に来たりと交流が続き、コロロメソッドが根付いている。2019年9月には、コロロメソッドが正式に「自閉症療育プログラム」として取り入れられた。現在は自閉スペクトラム症(ASD)やダウン症の子どもなど58人が通っている。

 他人に対する興味・反応が薄い自閉症児の人に注視する力を育てる「人間教材」として、2人はDRで、マレーシアの先住民族カダザンの伝統的な衣装を身につけて民族舞踊を披露した。子どもたちは音楽に合わせて踊る姿を集中して見つめた。リズム体操では子どもたちをサポートしながら集団への参加を促すなど、実践的な支援の方法を学んだ。

 2人は「(今回の研修で)沖縄の地域文化を学び、コロロメソッドの知識を深め、発達障がいのある子どもたちを支援するスキルと能力を磨きたい」と話した。