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体の仕組み、女性特有の病、性教育…心身の健康は「知ることから」 女性の翼が講演会 沖縄


体の仕組み、女性特有の病、性教育…心身の健康は「知ることから」 女性の翼が講演会 沖縄 講師を務めた(右から)深津真弓さん、オリガ・エリセーバさん、髙宮城直子さん=7月24日午前、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 嶋岡 すみれ

 那覇市女性の翼(仲昌代会長)は10周年企画として「若者の身体と心のケア」と題した講演会を7月24日、那覇市の県男女共同参画センター「てぃるる」で開いた。講師に産婦人科医でNaoko女性クリニック(浦添市)院長の髙宮城直子さん、「HerLifeLab(ハーライフラボ)」代表で、免疫学者のオリガ・エリセーバさん、産婦人科医で美ら海ユースクリニック(名護市)代表の深津真弓さんが登壇した。女性の身体の仕組みや、女性特有のがんの問題、性教育の重要性などについて説明した。保護者や教育関係者、女性の支援団体関係者ら、約80人が真剣な面持ちで話に聞き入った。当日の様子を詳報する。(嶋岡すみれ)

自分の身体を知って 髙宮城さん

 身体や性について、間違っている情報がたくさんある。まずは自分の体について知ってほしい。生理は通常1週間以内、約140ccの出血で終わる。子宮筋腫で子宮摘出の手術をする時にも同程度の出血をするので、女性は毎月手術を受けるくらいの血を失っている。ひどい生理痛を我慢している人も多い。痛くなる前にきちんと薬を飲むことが大切だ。

 生理は過激なダイエットやストレスがかかると止まる。自分の生理のパターンを知って、治療を受けてほしい。3カ月以上生理が来ない場合は、妊娠の可能性がある。妊娠21週を超えたら中絶ができない。「受診するお金がないし、親にばれたらどうしよう」と思っている間に手遅れになる。いろんな支援団体が無料で受診できるように助けてくれるので、どんどん相談してほしい。「望まない妊娠」を避けるには(1)産み、育てられる年齢になるまでは性行為をしない(2)正しく、しっかり避妊する―しかない。

 「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)」という考え方がある。(1)「セクシャルヘルス 性に関する心身の健康」(2)「リプロダクティブヘルス 生殖に関する心身の健康」(3)「セクシャルライツ 『性』を自分で決められる権利」(4)「リプロダクティブライツ 産むか産まないか、いつ何人の子どもを持つか自分で決める権利」―を指す。SRHRに基づいた「Well―being(身体的、精神的、社会的にすべてが満たされた状態)」を目指してほしい。生き方や性との向き合い方は個人の自由。自分で選び取って。

子宮頸がん検診を エリセーバさん

 世界的に女性の健康に関する知識は不足している。例えばアメリカでは1993年まで、臨床研究に女性を含めることを義務づけていなかった。女性のホルモンの働きや、免疫細胞や病気との関連性といった基礎研究は足りていない。それが女性の健康に対する、社会全体の関心や理解の低さにつながっている。また女性たちも家族のことや仕事などがあり、自分の健康について考える優先順位がとても低いと感じている。

 乳がんや子宮頸がんなど、女性特有のがんが増えている。日本では年間約1万人の女性が子宮頸がんを発症し、約3千人が亡くなっている。近年は20~30歳代の女性の罹患(りかん)率・死亡率がともに増えている。「出産年齢」のピークは30歳代前半で、そこに子宮頸がんの「発症年齢」が重なる。

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が関係している。海外の報告では、異性との性経験のある女性の84・6%が一生に一度はHPVに感染すると推計されている。200種類以上の型があり、発がん性のある高リスク型と、良性腫瘍を引き起こす低リスク型がある。

 ワクチンに限らず、どんな薬でも副作用はある。副作用のリスクよりも、将来がんを防げるベネフィット(利益)の方が圧倒的に強い。感染予防のためのHPVワクチン接種と早期発見のために、20歳以上になったら子宮頸がん検診を受けてほしい。

同意なしは暴力 深津さん

 本来性行為はコミュニケーションの一つ。悪いことではない。だが相手の同意なく性行為をしたら、それは性加害、性暴力という犯罪になる。性別に関係なく、相手の同意なく何かの行動を起こしたら暴力だ。

 「デートDV」というカップル間で起こる暴力がある。(1)身体的暴力(殴る、蹴る、物を投げる)(2)性的暴力(性行為の強要、避妊しないなど)(3)精神的暴力(無視する、大声でどなる、行動をチェックするなど)―がある。さまざまな暴力で相手を支配し、周囲から孤立させる。よく束縛は愛情だと思っている子がいるが、束縛も暴力だ。

 「性的同意」には「いい」「嫌だ」「ちょっと考えさせて」といった意思表示、意思確認が大切だ。そしてもし性行為をしたくない時に「嫌だ」と言えるか。「嫌だ」と言われたらその意見を尊重できるか。小さいうちから家庭の中で練習できるといい。

 性教育は性行為の手段を教えるのではなく、性行為によって何が起こるのかを教えるものだ。「寝た子を起こすな」というような、知らなければいいという問題ではない。小学生でもアダルトサイトを見る時代だ。その子がコンドームをつけずに実践してしまったらどうなるのか。大人の感覚だと「そんなことまで教えるの」と思うかもしれないが、子どもたちの方が偽の情報をたくさん知っている。それで性行為をしてしまう方が怖い。必要な正しい情報を伝えて「あなたはどうするの」と問うことの方が大切だ。