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障害者差別解消法 合理的配慮の提供が義務化<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>29


障害者差別解消法 合理的配慮の提供が義務化<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>29
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 1998年4月、HIVによる免疫機能障害により日常生活が著しく制限される場合は、福祉施策上の身体障害として認定されるようになりました。そのため、免疫機能の障害の程度によって身体障害者福祉法上の身体障害者として認定(1級~4級)され、障害者手帳の交付や障害年金の受給が可能となりました。HIVとともに生きる方の中には、その障害の程度に応じ、必要な福祉サービス等を受けている方がいらっしゃいます。

 2013年6月に障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として「障害者差別解消法」が制定されました。この法律は、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会(共生社会)の実現を目指すことを示しています。

 この法律では、行政機関や事業者に対して、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、障害のある人から申し出があった場合に、負担が重すぎない範囲で障害者の求めに応じ合理的配慮をするものとしています。

 なお、ここでいう「障害者」とは、障害者手帳を持っている人だけではありません。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害や高次脳機能障害のある人も含まれます)、そのほか心や体のはたらきに障害のある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、継続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受けている全ての人が対象となります。

 これまで事業所による合理的配慮の提供は「努力義務」でしたが、24年施行の同法の改正では、事業者による合理的配慮が「義務化」されました。改正に伴い、合理的配慮の提供における留意点として「前例がない」「〇〇のある人は」「もし何かあったら…」などといった理由で断ることは、正当な理由にはならないとしています。

 また国は個別の状況に応じて柔軟に検討し、提供に当たっては「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要だと明確に示しています。建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあります。

 県内では、いまだHIVを理由として受診や転院、施設入所(入居)、介護・福祉サービスの利用等が断られる事例が数多くあります。今回の改正を機に、それらが不当な差別的な取り扱いになっていないか、今一度考えていただければと思います。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)