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エイズ予防指針 人権や性教育なども明記<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>28


エイズ予防指針 人権や性教育なども明記<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>28
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 読者の皆さんは「エイズ予防指針」をご存知でしょうか? 「指針なんて自分には関係ない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし指針には「人間が人間らしく生きる権利、生まれながらに持つ権利」である人権や、学校で行われる性に関する教育などについても記されており、私たちにとって身近で重要な内容が多くあります。

 日本のエイズ対策は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づき1999年に策定された「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(以下、エイズ予防指針)」に沿って講じられています。

 本指針に基づき、国と地方の役割分担の下、人権を尊重しつつ、普及啓発および教育、検査・相談体制の充実、医療の提供などの施策に取り組むこととされています。

 また、同指針はエイズの発生動向の変化等を踏まえ、5年をめどに改定が行われます。現在、4回目の改定に向けた話し合いが進められています。

 現行(2018年1月施行)の予防指針は、「前文」「第一 原因の究明」「第二 発生の予防及びまん延の防止」「第三 医療の提供」「第四 研究開発の推進」「第五 国際的な連携」「第六 人権の尊重」「第七 施策の評価及び関係機関との連携」で組み立てられています。

 次期エイズ予防指針の構成案では、全7章中の第6章だった「人権の尊重」が第1章になり、さらに「偏見・差別なく適切かつ必要な医療を受けること」がしっかりと明記される案となっています。

 また、本連載でもお伝えしてきたU=U(「Undetectable:検出限界値未満」=「Untransmittable:HIV感染しない」)が「前文」、第3章「発生の予防及びまん延の防止」、第4章「医療の提供」でも取り上げられる案となっています。

 指針を基に、県内ではゲイ・バイセクシャルの男性を対象に、HIVの感染予防を行っている団体「nankr―okinawa―(なんくる沖縄)」が2008年に正式に発足し、2019年には県のコーディネーター事業が始まりました。適宜、行政や地域の医療機関、介護事業所、職能団体などと連携してさまざまな取り組みを行っています。

 次期エイズ予防指針の改正に向けての内容は、厚生労働省のホームページに資料が掲載されており、どなたでも閲覧することが可能です。ぜひ読者の皆さまにもご覧いただければと思います。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)