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正しい知識が必要 出前研修やセミナー受講を<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>27


正しい知識が必要 出前研修やセミナー受講を<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>27
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 2022年6月の本連載で、発熱時に病院を受診しようとしたAさんがHIVで通院中であることを伝えると、「HIVの人は診ることができない」と拒否されたとお伝えしました。このような現状を変えるため、感染症診療ネットワークコーディネーターとして、一般の方、医療や介護、福祉関係者等に対し、出前研修や新聞、セミナー等、さまざまな機会を通し、HIV感染症に関する正しい知識を持っていただけるよう活動をしてきました。 

 しかし、県内で新型コロナウイルスの感染者が増加してきた今年6月。発熱し、近くの発熱外来を受診しようとした当事者がHIV感染者であることを伝えると、断られたり、検査時に医療者から拒否的反応をされたりしたという相談が6件ありました。声を出せない当事者もいたとすれば、私へ寄せられた6件は、氷山の一角なのかもしれません。このようなことが起きる度、なぜこういった対応(扱い)をされなければならないのかと、怒りさえ覚えます。

 HIVとともに生きる方々が医療やケアを必要とする時、HIV感染症というだけで、偏見、差別を受けることは、当事者のメンタルヘルスに強く影響し、治療意欲を阻害する恐れもあります。そもそも病名によって、患者を線引きするような対応が許されると思っていること自体がおかしいのです。

 確かに、医療者、専門職だからといって、必ずしもHIV感染症についてよく知っているとは限らないでしょう。ですが、立場に関係なく、「正しく知ろう」という姿勢で向き合うことはできるはずです。また、たとえよく知らないとしても、当事者の尊厳を傷つけていい理由にはならないはずです。

 私たちの身の回りには、HIV感染症に限らず、さまざまな感染症があります。今、私たちに必要なことは正しい知識を持つことです。さらに、誤った知識や思い込みを、正しい知識へ修正することです。正しく知ったその先は、当事者の尊厳を傷つけないために個々人がどう行動に移していくのか、考えてほしいと願っています。

 その一助となるよう、エイズ治療中核拠点病院である琉球大学病院では、毎年、医療機関、介護事業所等を対象に、HIV感染症に関する研修を開催しています。HIV診療チームが講師を担当しています。本年度は10月2日に開催予定です。関心のある方はぜひhttps://hiv-okinawa.com/topics/891/まで問い合わせをしてください。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)