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ハワイへ「恩返しを」 読谷、福島、下関…支援が続々 移民出身県も寄付募る


ハワイへ「恩返しを」 読谷、福島、下関…支援が続々 移民出身県も寄付募る 米ハワイ州マウイ島の山火事で大きな被害を受けた西部ラハイナ=6日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「恩返しをしたい」。米ハワイ州マウイ島の山火事を受け、現地とつながりのある日本各地から寄付金が続々と集まっている。後押しするのは、戦後の混乱から東日本大震災まで日本が苦しいときにハワイに助けてもらった記憶だ。少なくとも115人が死亡した大災害は8日で発生から1カ月。邦人被災者は祖国での支援の広がりに「感謝しかない」と話す。

 「マウイとは絆がある」。福島県双葉町の和太鼓チーム「標葉せんだん太鼓保存会」の今泉春雄会長(70)=同県本宮市=は語る。

 マウイでは2011年、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で被災した福島県の人たちを癒やそうと、ホームステイに招いてもてなした。

 現地に伝わる「マウイ太鼓」の起源が福島にあることから、今泉さんらがお礼にと14年に和太鼓コンサートをマウイ西部ラハイナのラハイナ浄土院で開いた。その寺は今回の山火事で焼失した。

 今泉さんは原発事故の影響で、住んでいた双葉町から避難を余儀なくされた。「被災したマウイの人たちのつらさは分かる」。かつてマウイを共に訪れた別の和太鼓チームにも寄付金を募るなど奔走。集まったお金は日系人らの「心のよりどころ」である寺の復興に役立ててもらうつもりだ。

 ラハイナの被災地域では立ち入り規制が続く。寺から東に約20キロのワイルクの親族宅に身を寄せる住職の原源照さん(87)=長野県出身=は日本からの「温かい思いやり」に感謝している。

 読谷村の「沖縄ハム総合食品」は、沖縄ハワイ協会が募金を立ち上げた当日に500万円を寄付した。県などによると、食料が不足した戦後の沖縄にハワイの沖縄出身者らが豚550頭を送り、畜産業の復興に貢献した。支援は「命をつないでくれた」(同社)お返しだ。

 山口県下関市の県立下関西高の科学部員らは、22年秋からマウイ高校とロボット開発で交流してきた縁があり、校内で寄付を呼びかけた。部長の2年中里悠人さん(17)は「少しでも被災者の役に立ちたいと思った」と振り返った。

 ハワイは1868年、日本人が初めて集団移住した場所の一つ。移住者が多かった広島県や山口県では寄付の呼びかけが始まった。

移民出身県が寄付訴え

 【カフルイ(マウイ島)共同】米ハワイ州マウイ島の山火事は8日で発生から1カ月。ハワイは1868年、日本人が初めて集団移住した場所の一つで、移住者が多かった県では山火事を受けて寄付の呼びかけが始まった。ハワイ選出の日系議員がルーツを持つ自治体も寄付を募っている。

 移住者が最も多かった県の一つ、広島県は8月下旬、議会と合わせて300万円の見舞金を送ると発表した。義援金の受け付けも始め、湯崎英彦知事は記者会見で「県とつながりの深いハワイで被災された方々に心を寄せていただきたい」と訴えた。

 同じく移民が多かった山口県も寄付の呼びかけを開始。福岡県は200万円、沖縄県議会は100万円の見舞金の贈呈を決めた。

 福岡県八女市は、ハワイ生まれの日系2世で日系人初の連邦議員だった故ダニエル・イノウエ氏の父親の出身地であることから、市役所に募金箱を設置した。