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【記者解説】被害者支援の視点欠落 SACO見舞金認めず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 公務外米兵2人によるタクシー強盗致傷事件で被害者向けのSACO見舞金制度を巡る控訴審判決は、被害者遺族側の控訴を棄却した。米兵に損害賠償を求めても賠償金を実際に得られるかどうかのハードルは高く、被害者側が泣き寝入りするケースが多いとされる。判決はそういった実態に目を向けず、被害者支援の視点が欠落していると言わざるを得ない。

 被害者側がSACO見舞金を受け取るには、加害米兵に損害賠償訴訟を提起する必要などがあり、被害救済までの時間的道のりは長い。また損害賠償を命じる判決が確定しても、国が遅延損害金の支払いを拒否する問題もある。

 この訴訟は被害者側が泣き寝入りせず、被害者支援の指針を確立するために提起されている。だが一審に続き控訴審判決は、国によるSACO見舞金支給の義務を認めなかった。SACO見舞金は、米軍基地の負担が集中する沖縄で1995年に発生した少女乱暴事件をきっかけに96年に創設された。米兵らの不法行為による被害救済のためにつくられた制度だが、現状は国が責任を持って救済しているとは言えない。遺族側は上告する方針だ。司法が制度の趣旨をくみ取れるか、最高裁の判断が注目される。 

(金良孝矢)