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精神障がい者の傍聴制限 沖縄の日本復帰当時からそのまま 22年時点で9市町村の教育委員会に残存 差別解消法の施行後も見直されず


精神障がい者の傍聴制限 沖縄の日本復帰当時からそのまま 22年時点で9市町村の教育委員会に残存 差別解消法の施行後も見直されず 精神障がい者の傍聴を禁ずる表記が残る傍聴規則(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 毅

 沖縄市や糸満市など県内九つの市町村の教育委員会会議傍聴人規則で、精神障がい者の傍聴を禁止する表記が昨年末時点まで残っていたことが20日までに分かった。

 1972年の公布から2016年の障害者差別解消法の施行後も、見直していなかったとみられ、同法に抵触する可能性がある。精神障がい者らでつくる市民団体が昨年6月に全国1718市町村の議会と教育委員会などの傍聴規則を確認し、明らかになった。同団体が県を通して指摘し、現在は8市町村が削除、1村が削除予定としている。

 障がいを理由とする差別の解消に向けては、14年に国連で採択された「障がい者権利条約」を日本も批准し、国内の法整備の一環として16年に障害者差別解消法を施行した。同法では、行政機関による不当な差別的扱いの禁止(第7条)、合理的配慮の提供(第8条)を定めている。

 日本福祉大学の青木聖久教授(社会福祉学)は規則について、公布当時は精神疾患が日本国内で回復の見込みのない遺伝的疾患との認識だったことを指摘。「そのような勘違いが国を筆頭に全国で根強くあり、欠格条項が当然のように記載されていたのでは」と推察する。

 今回調査を行った、「心の旅の会『市民精神医療研究所』」(静岡県)によると、教委での傍聴制限が昨年まであったのは沖縄市、糸満市、与那原町、本部町、竹富町、北中城村、読谷村、多良間村、伊江村。いずれも1972年の公布当時のまま、表記が残っており、傍聴を禁ずる者として「精神に異常があると認められる者」「精神病者」などとあった。

 各自治体は本紙の取材に対し、意図時な残存は否定した上で、「(文言の)存在が分かっておらず、見直しもできていなかった」「話題に上がることがなかった」と説明した。

 読谷村を除く8市町村は8月末時点までに文言を削除。読谷村は本年度中に削除を予定している。県内ではそのほか、渡嘉敷村で議会傍聴人規則、県海区漁業調整委員会運営等規定などにも残っていたが、すでに削除、あるいは本年度中の削除を予定している。

 全国調査した「心の旅の会│」の寺澤暢紘さん(78)は「どちらもすぐに削除に動いてくれてはいるが、残っていたこと自体が問題で、差別への無自覚、無意識を強く感じている。全国的に差別解消に向けた対応がまだ十分ではない」と語った。

 同会の調査では昨年の7月31日時点で、全国357自治体および59広域行政機関に462件の制限条項があった。「狂人」「瘋癲(ふうてん)」「白痴」などの表記が残る自治体もあったという。調査時点で制限条項がなかった都道府県は大阪府と広島県、山口県のみだった。

(新垣若菜)