琉球遺骨の返還請求訴訟の控訴審判決は、原告敗訴となった。識者に見解を聞いた。
控訴審判決は一審判決と同じ結論だったが、「付言」に注目すべき点がある。
そもそも琉球・沖縄と日本本土(ヤマト)では、墓制や葬制などの伝統的慣習が大きく異なっていた。琉球では、かつての村墓や近現代の門中墓のように、集団で祖先を手厚く祭祀(さいし)することが広く行われてきた。京都帝大の研究者による遺骨盗掘がなされた百按司(むむじゃな)墓も、そのような集団的利用の墳墓に属する。
それに対して、墳墓や遺骨などの相続を定めた民法897条の「祭祀承継者」の規定は、本土のイエ本位社会や戦前の戸主権の伝統の名残で、「~家の墓」というような家族単位のお墓が単独相続されることを想定している。
だとすると、本裁判の問題性は、多数派の大和人の法に基づいて少数派の琉球人の遺骨返還請求が裁かれている点にある。植民地主義の過去の清算や沖縄の自己決定権の確立とも深く関わっている。
原告側が控訴審で力点を置いたのが、憲法に加え、先住民族に遺骨返還を認めた国際連合宣言などの国際人権法である。近年では、先住民族の遺骨や文化財の返還が大きな世界的な潮流となっている。
控訴審判決でも、「付言」の形で訴訟による解決の限界を述べつつも、先住民族の権利擁護の世界的動向に極めて肯定的に言及し、和解による遺骨返還に向けた関係者の協議の場などの環境整備を強く促していて、最高裁上告後の明るい材料と言える。
(政治社会学)