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【深掘り】暴力団への用心棒代・みかじめ料、店側も厳正対処 沖縄県警 資金源の根絶へ「ギブ・アンド・テイク」の関係にくさび


【深掘り】暴力団への用心棒代・みかじめ料、店側も厳正対処 沖縄県警  資金源の根絶へ「ギブ・アンド・テイク」の関係にくさび 飲食店などへの一斉家宅捜索に向かう県警捜査員ら=2023年7月、那覇市松山
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県警は暴力団の資金源根絶を狙い、用心棒代やみかじめ料として暴力団に資金を提供したとみられる店舗への圧力を強めている。今月5日には暴力団への利益供与を禁じて罰則を科す県暴力団排除条例の規定を初適用し、暴力団員2人に加えキャバクラ店経営者ら2人を逮捕。資金供与する店舗側も厳正に対処する方針を示す。「ギブ・アンド・テイクの関係性」(捜査関係者)を崩し、暴力団の資金を絶つ構えだ。店舗側は暴力団への資金供与を「必要経費」と捉える一方、摘発を避けたいとの思惑もあり、板挟みに頭を抱える。

 7月5日午後9時ごろ、県警の機動隊車両が那覇市松山の目抜き通りに並んだ。隊列を組んだ捜査員らがキャバクラ店などに次々と立ち入った。同20日には沖縄市上地の通称・中の町でも一斉捜索を実施。これまでに数十店舗を家宅捜索した。

 県暴排条例は2019年5月の改正施行後、松山と中の町を暴力団排除特別強化地域に指定し、この地域では暴力団員と風営法適用店舗に用心棒代やみかじめ料の授受を罰則付きで禁じた。この禁止規定の“活用”に向けた証拠を集めるための一斉捜索だった。

 関係者によると、県警は少なくとも現金1千万円や携帯電話を押収し、用心棒代などに関するやりとりの裏付けを得たとみられる。8月には県警組織犯罪対策課と生活保安課、那覇署、沖縄署による特別捜査本部を設置し、組織的な関与の有無など、暴力団幹部の摘発も視野に捜査を進めている。

 県内の暴力団情勢に詳しい男性によると、用心棒代やみかじめ料は、キャバクラ店やスナックなどの風俗店や夜間に営業する飲食店の一部が、1店舗当たり月に数万円を拠出している。店舗の場所や集客力によって金額は異なる。
コロナ禍で飲食店に休業手当が給付されていた際は、その一部がみかじめ料などの名目で暴力団関係者に流れていたと明かす。男性は「飲食店などではトラブルはつき物。月数万円でトラブルが抑止できる上、問題が発生すれば賠償などの解決にも動く。警察にはできない仕事だ」と話す。

 暴力団と持ちつ持たれつの関係にある店舗がある実態が浮かぶ一方で、自発的に支払っているわけではない店舗からは不満も漏れる。

 本島南部でスナックを経営する40代女性は「数年前の開店当時から(用心棒代を)支払っている。周囲の店も払っているし、付き合いだと思ってる。店の経営に影響が出る金額ではないが、払わないでいいのであれば、その分を従業員の給与に回したい」と話す。

 那覇市内のバーの店長は「暴力団関係者が店に近づかないようにと面倒を避けるために払っている」と語りつつ、「厄介払いで金を払い、その上摘発までされるとなると、二重苦、三重苦だ」と戸惑いの表情を見せた。

 県警組織犯罪対策課は罰則の減免措置があるとして、暴力団への資金提供が疑われる店舗に対し、情報提供や関係断絶を呼びかけている。