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第3次やんばる訴訟 二審も原告の請求棄却 植林事業の補助金巡り 上告検討へ


第3次やんばる訴訟 二審も原告の請求棄却 植林事業の補助金巡り 上告検討へ 判決を批判する(右から)平良克之原告団長、喜多自然弁護士、赤嶺朝子弁護士=28日、那覇市松尾の沖縄合同法律事務所
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国頭村が2016、17年度に宇良地区の村有林約3ヘクタールを伐採、植林した事業を巡り、沖縄県が村に補助金を支出したのは違法だとして、県民9人が当時の県幹部らに計約870万円を賠償させるよう県に求める「第3次やんばる訴訟」の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は28日、原告の訴えを退けた一審判決を支持し、原告の請求を棄却した。原告側は今後、弁護団と上告するかを検討するとしている。

 判決では伐採対象地は世界自然遺産の登録推進地域ではなかったとし、県幹部らが補助金支出決定に際して「林産物の供給の機能を重視することが相当であると判断したことは不合理ではない」とした。また「皆伐により他の機能が短期的に損なわれたとしても、森林の全体としては多面的機能が回復すると判断したと解される」との判断も示した。

 原告側は対象地は生物多様性のある森林で、事業の要件を満たさないと主張していた。判決では原告側が森の豊かさを立証するため提出した調査報告書などが、事業実施から1年以上経過した後の調査を基にした推定だとし、「そこから直ちに事業実施前の状況を認定することはできない」と退けた。

 判決後の会見で原告側代理人の喜多自然弁護士は、知事の裁量権の広さを根拠に補助金支出の決定過程に踏み込んでいないなどと判決の問題点を指摘し、「行政判断、プロセスに対するチェック機能としての、司法の役割を放棄した」と批判した。原告団長の平良克之さん(72)は1次訴訟からの判決やこれまでの経緯を振り返りながら「森は傷んできている。判決は本当にがっかりだ。1次、2次と比べても3次の裁判長や裁判官は森の生態系をまったく分かっていない」と述べた。