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臓器移植の意思表示「親しい人と話して」那覇でシンポ 体験者「ドナーの出身地訪れたい」と感謝


臓器移植の意思表示「親しい人と話して」那覇でシンポ 体験者「ドナーの出身地訪れたい」と感謝 臓器移植の意思表示の大切さについて語る医師や看護師ら=21日、那覇市泉崎の県立図書館
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉陽 拓也

 「『意思表示』 あなたの選択 だれかの未来」をキャッチフレーズにした「臓器移植を知るシンポジウム2023」が21日、那覇市の県立図書館で行われた。医師らが登壇し、臓器提供をする・しない、提供を受ける・受けないの四つの権利について日頃から親しい人と話し合い、運転免許証や健康保険証に表示しておく意義を語った。

 基調講演で浦添総合病院の救急医の那須道高さんは、人口100万人当たりの臓器提供者(脳死下)の数は、米国やスペインの40人以上に対し、日本は0・62人と、大きな開きがあると指摘。国内では、臓器提供への関心は一定程度あるものの、意思を表示している人は少ないという。臓器移植を判断する日は事故や病気によって突然訪れるため、日頃から身近な人に伝えておくことを勧めた。

 救命がかなわない患者家族に移植の選択肢を提示する医療者としては「『手のひら返し』のようで信頼を失う怖さもあるが、移植という選択肢を知らないまま患者が亡くなるのは誠実ではない」などのジレンマがあると説明。そのため、浦添総合病院では、高度の意識障害患者などを対象に臓器提供に適合するか把握しておく「ドナーディテクション」を継続していることを説明した。

 移植体験者として、2019年に20年以上待ち望んだ腎臓移植を受けた野嵩正恒(48)がドナーへの感謝を報告。水分制限や透析が欠かせなかった日々を乗り越えた今、「家族と過ごす時間も増えた。旅行に行くならドナーの方の出身地を訪れ、家族全員でありがとうと言いたいです」と、命をつなぐ移植医療の重要性を語った。

 (嘉陽拓也)