きっかけは1本の新聞記事 おからビスケットの商品化 廃棄を防いで新たな価値生む 菓子製造のナンポー・安里社長、問題提起の元大学生と決意 


きっかけは1本の新聞記事 おからビスケットの商品化 廃棄を防いで新たな価値生む 菓子製造のナンポー・安里社長、問題提起の元大学生と決意  「たすと おからビスケット」を手にする、崎濱花鈴さん(前列右)、知念杏珠さん(同左)とナンポーの安里睦子社長(後列中央)ら=18日、那覇市曙
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽

 2021年、新型コロナ禍で経営危機に直面していた菓子製造販売のナンポー(那覇市)。返品や社員の退職が相次ぐ中、安里睦子社長が目にしたのは、おからの廃棄問題に取り組む大学生2人の記事だった。豆腐屋から大量に出るおからをスプーンに変えて、フードロスを解決しようとする姿に「製造環境があるのに一緒にできないなんて」と心が締め付けられたという。同社は今年8月におからビスケットを新発売。18日、活動を続ける2人を会社に招き「バトンを受け取った。一緒にこの問題を背負う」と、共に課題解決に取り組む考えを伝えた。

 21年12月24日付の琉球新報に、当時琉球大4年生の崎濱花鈴さん(23)と知念杏珠さん(26)の活動が紹介された同時期、安里社長は社員にボーナスを出すことができなかった。工場長の砂川美由紀さんから「学生が頑張っている。何とか支援できないか」と相談されたが「社員を守らなきゃいけない」と断った。

 2人が沖縄のおからを県外の会社に送って商品化していたことも「製造環境があるのに情けない」と悔やんだ。

 9割の商品が返品され経営難にあえぐ中、観光客向けの菓子開発を中断し、おからの廃棄問題を調査した。そして同社として初の観光客向けではない健康志向の「たすと おからビスケット」を商品化した。

 会社に招かれ経緯を聞いた知念さんは「当時は注目を集めたが、おからの大量廃棄が社会問題として捉えられるようにはならなかった」と振り返る。

 2人は大学卒業後、別々の会社に就職し、休日に活動を続ける。知念さんの勤務地は東京だが毎月直接会って活動を前進させている。

 最近はおからを牛の飼料にしてミルクでジェラートを作った。しかし協力農家は1社だけ。崎濱さんは「最近は、私たちの活動って意味あるのかな、限界だと話していた」と涙を流す。

 安里さんは、2人が目指している「栄養があるのに廃棄されているおからの価値を高めるための研究」なども進めていることを説明。「あなたたちがいなければ、私たちの問題意識は生まれなかった。一緒に解決を目指す」との安里さんの力強い後押しを受け、崎濱さんと知念さんはおからでさらなる展開を見据えている。

 (嘉数陽)

きっかけとなった記事

おからスプーンで豆腐屋を守ろう 食品ロスとゴミ問題に琉大生2人が立ち上がる

おからスプーンで、プラスチックごみの削減やおから大量廃棄を巡る課題を解決しようと挑戦を続ける崎濱花鈴さん(右)と知念杏珠さん=11月30日、西原町の琉球大  沖 …