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<沖縄ヘイトにあらがう5>差別の「笑い」許さない 安田浩一さん(ノンフィクションライター)


<沖縄ヘイトにあらがう5>差別の「笑い」許さない 安田浩一さん(ノンフィクションライター) 安田浩一さん(ノンフィクションライター)
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 笑うな。何がおかしいんだ。こぶしを突き上げることか? それとも路上で座り込む姿か? 怒りに満ち満ちたその表情が、そんなにもおかしいのか?

 取材現場で何度も問うてきた。なのに「やつら」は笑い続ける。正直に言おう。今、私は悔しくて仕方ないのだ。人間のまっすぐな怒りを、腹の底から沸き立つような怒りを、笑うことで無効化させようとする人たちを心底許せないのだ。「論破王」を名乗る実業家も、売れっ子小説家も、取材もしないで番組をつくるテレビ制作者も、自称「愛国者」を名乗る人たちも、政治家も、ほら、今日も安全圏で軽薄な笑みを浮かべている。そして、マイノリティーが、被差別者が、顔を真っ赤にするのを待っている。

 沖縄もまた、ずっとそうした醜悪な笑いの「素材」として利用されてきた。

 冗談じゃない。歴史を変えてきたのも、人類があらゆる権利を獲得したきっかけも、全ては人の怒りではないか。

 切実な思いを知ったふうな理屈で小ばかにされて、落ち着いていられるわけがないのだ。あらゆる理不尽に対して、権力者の暴力に対して、差別や偏見や手あかの付きまくったデマに対して、人はときに、内臓の壁が震えるほどの怒りを示す。

 だから私は何度だって繰り返す。差別の道具として機能するような笑いを許さない。沖縄に向けられる嘲笑や冷笑を絶対に認めない。

 沖縄は「やつら」の玩具ではないのだ。

 (おわり)


 琉球新報は11月10日午後6時から那覇市泉崎の琉球新報ホールで創刊130年記念事業の一環として池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」を開く。入場無料(整理券が必要)。問い合わせ先は琉球新報編集局暮らし報道グループ、電話098(865)5158。