沖縄の在来馬、守り生かそう 那覇でシンポ、吉永みち子さん講演も 


沖縄の在来馬、守り生かそう 那覇でシンポ、吉永みち子さん講演も  「在来馬と日本人」をテーマに講演する吉永みち子さん
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 沖縄在来馬を知るシンポジウム2023(沖縄県在来馬保存事業事務局主催、全国乗馬倶楽部振興協会共催)が12日、那覇市の琉球新報ホールで開かれた。基調講演やパネルディスカッションを通じ、県内に生息する与那国馬や宮古馬の在来馬の保存に向けた具体的な取り組みや馬文化の県民へのさらなる発信の必要性などについて報告や意見が交わされた。

在来馬の保存事業について活発な意見を交わしたパネルディスカッション=12日、那覇市泉崎の琉球新報ホール

 元競馬記者でノンフィクションライターの吉永みち子さんは「在来馬と日本人」をテーマに基調講演をした。吉永さんは、昭和初期の軍部による戦地への徴用や、品種改良のために在来馬を断種させた歴史に言及。戦争の影響を指摘しつつ、役割が機械に代わったことも減少に影響したことを紹介した。
 宮古馬が観光に活用されていることに触れて、在来馬への理解が広がることに期待を寄せ、心の傷を負った子どもたちの治療や、障がい者の乗馬の活用などを提案した。

 パネルディスカッションでは在来馬保存に取り組む5人が登壇した。沖縄こどもの国で実施している琉球競馬「ンマハラシー」について、同園の金尾由恵さんは「(走りの美しさを競う)ルールを伝えるのが難しい」と課題を語り、魅力を伝えるために来園者に実際に審査してもらうなどの工夫をしていることを報告した。
 久米島馬牧場の井上福太郎さんは在来馬を耕作放棄地に放つ取り組みを紹介した。「地主も喜んでくれ、僕らも費用をかけず持続的に仕事ができる」と利点を強調した。

ヨナグニウマ2頭とふれあう来場者=那覇市泉崎の琉球新報社1階あじま~る

 「ヨナグニウマ保護活用協会」の中川美和子さんは南城市のホテル敷地への牧場開設を報告。「ホテルに馬がいることで周知度も上がっていると思う」と話し、さらなる発信に意欲を見せた。
 与那国町で今夏開かれた牧場体験に参加したスポーツニッポン新聞社の梅崎晴光さんは島で進む軍備増強を指摘。「島興しを、馬から国防に転換しつつあると感じた」と語り、保護への影響を懸念した。
 元中央競馬騎手で在来馬保護に携わる岡部幸雄さんは「在来馬を東京競馬場で走らせられないか」とする聴衆の質問に、「走らせたいなという思いはすごくある」と述べ、会場を沸かせた。
 琉球新報社の1階では与那国馬と触れ合えるコーナーが設けられ、子どもたちの人気を集めた。

 (小波津智也)