prime

【深掘り】市民が主導「スタートライン」 脱政党・労組で初結集 県民平和大集会 自衛隊の直接批判は回避


【深掘り】市民が主導「スタートライン」 脱政党・労組で初結集 県民平和大集会 自衛隊の直接批判は回避 主会場のフィールドの外側から登壇者に拍手を送る参加者=23日午後2時18分ごろ、那覇市の奥武山公園陸上競技場(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「沖縄を二度と戦場にしない」とうたい、政党や労働団体が加わらない市民団体が主催した23日の県民大集会。政府が2022年末に安全保障関連3文書を閣議決定して以降、南西諸島をはじめとする県内での軍備や訓練の増加に対し、多くの県民が一堂に会して抵抗の意思を明確に打ち出す初めての機会となった。

 「一人でも多くの人に時間をつくっていただきたい」。5日に北谷町で開かれた辺野古新基地建設を巡る県民集会で玉城デニー知事は、参加者にこう呼びかけた。

 日米安全保障体制や自衛隊について容認姿勢をとる玉城知事が23日の集会に出席するか否かは大会の意義に影響することから、知事支持層の関心を集めてきた。それだけに、知事の呼び掛けは大会の趣旨への賛同と受け止められた。

 与党県議の一人は今回の集会について、敵基地攻撃能力の保有などを盛り込んだ安保3文書により「自衛隊の存在意義が変わりつつあり、専守防衛と言えない状況に知事も危機感を持っているのではないか」と推察した。

 今回の集会の主催団体には政党や労働団体は加わらず、知事や国会議員、県議らも「来賓」としての出席にとどまるなど、全県組織が主導してきた従来の大規模集会とはおもむきを変えた。

 背景には玉城知事を支えるオール沖縄勢力の中でも、自衛隊配備問題は議論が進んでいなかった実態がある。別の与党県議は辺野古新基地建設問題解決のため「腹八分、六分でまとまった勢力」であり、自衛隊問題については「意見集約が難しい」と打ち明ける。

 集会宣言は自衛隊配備に対する直接的な批判は避けつつも、配備に伴う訓練の増加といった生活への影響や、新たな部隊配備、軍事的緊張が高まっていることへの懸念を強調した。これが、自衛隊自体は容認しつつも、敵基地攻撃能力の配備や訓練の増加に懸念を示してきた玉城県政の姿勢と整合し、政治サイドが乗れる素地をつくった。

 主催団体関係者はこうした軍備強化について「私たちの想像以上に戦場化が進んでいる。部隊配備が進む先島諸島の住民は恐怖を感じており、そこにも目を向ける必要がある」と、独自に集会を実施した狙いを語った。「オール沖縄を見切るわけではない。独自に動き、可能であれば連帯する」と強調した。

 主催団体は参加を呼び掛けたものの、オール沖縄を支えてきた一部労働団体が自主参加とした。

 主催団体関係者は「組織的な運動に慣れていない人も一緒に取り組んでおり、調整に難しい面もあった」としつつ「きょうがスタートラインだ」と位置付けた。今後さらなる大規模集会開催で運動を広げたい考えを示した。

 (佐野真慈、知念征尚)