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「ぬちかじり」歌い続ける 戦争体験者の山根さん「とぅばらーま」に願い込め 県民平和大集会


「ぬちかじり」歌い続ける 戦争体験者の山根さん「とぅばらーま」に願い込め 県民平和大集会 平和への思いを込めて「とぅばらーま」を歌う戦争体験者の山根安行さん=23日、那覇市の奥武山公園陸上競技場(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 「命どぅ宝の命をいただいて、93歳のじいじがここに立っています。戦争は地獄です」

 15歳で沖縄戦を体験した石垣市宮良出身の山根安行さん(93)が壇上から聴衆に訴え、八重山民謡「とぅばらーま」に平和への願いを込め、創作した歌詞を声高らかに歌い上げた。「戦世(いくさゆ)ぬ地獄 コロナぬ嵐 凌(しぬ)ぎ命果報(ぬちがふう) なまになりねーぬ(今になった) 命(ぬち)どぅ宝」との歌詞に自身の体験を重ねた。

 沖縄戦当時、八重山地域に地上戦はなかったが、軍命でマラリアの有病地である山間地帯へ強制疎開させられ、住民の間にマラリアが流行した。山根さんはマラリアで母を亡くした。食料不足にも苦しみ、毒を抜かなければ死ぬ危険もあるソテツをすりつぶしたおかゆを食べて飢えをしのいだ。「骨と皮だけの状態で、生死をさまよい這(は)いつくばって生きた」

 戦争を生き延びた今、子ども2人、孫6人、ひ孫5人がいる。県内で進む軍事化の動きに「自分と同じ思いをさせたくない。戦争は愚の骨頂だ」と危機感を募らせる。

 八重山の代表曲「とぅばらーま」は、人々の愛情や生活の喜び、悲しみを歌詞に乗せ、旧暦8月13日の名月に歌い合う曲として継がれてきた。八重山古典民謡の師範でもある山根さんも「魂からの叫び」と大切にしている。「平和は私の命。残った人生を平和のために歌いたい」と、ぬちかじり(命の限り)歌い続ける決意を新たにした。

 (慶田城七瀬)