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アップデートされた平和運動 試される私たちの胆力 【11・23県民大集会体験記】喜納えりかさん(ボーダーインク)


アップデートされた平和運動 試される私たちの胆力 【11・23県民大集会体験記】喜納えりかさん(ボーダーインク) 喜納えりかさん(ボーダーインク)
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 那覇市の奥武山公園陸上競技場で23日に開かれた、11・23県民平和大集会(沖縄を再び戦場にさせない県民の会主催)について、沖縄にこだわり県産本を発信してきたボーダーインクの編集者の喜納えりかさんに寄稿してもらった。

 会場に一歩入ると空気が凪(な)いだ。三線と歌声がおだやかに響く音楽コンサートの最中でいつもの大会とは雰囲気が違うのを感じる。

 午後2時、玉城デニー知事が登場、ステージ前にどんどん人が集まっていく。辺野古問題の暗雲を払いのけるような力強い演説に歓声が上がる。

 今集会を通して、いつも耳にする定番フレーズやアジテーションのたぐいは少なかった。ふだんは集会に参加しないような層に、どう訴えれば届くのか、よく考えられている。それが際立ったのが前泊博盛氏の基調報告である。諸外国は「台湾有事」をどう見ているのか。ファクトとエビデンスに基づいて紹介し、かなり聞き応えがあった。

 もう一つの特徴は、「世代交代」を志向する主催者側のメッセージだ。司会者や演奏者、登壇者などの中心は若い顔ぶれ。手あかのついていない言葉。キッチンカーやキッズスペース設置なども若い世代の発案だろう。「準備中は世代間ギャップに悩まされた」と若者から率直な声もあったが、それを乗り越えて集会を実現させたことを評価したい。

 運動には広がりと持続性の両方が必要だ。スタイルを何十年も変えない運動は、リアルな社会との接続ができずに広がりを欠いてしまう。逆に、目新しさに頼るだけだと持続性がなくて経験や知見が蓄積されない。試行錯誤しながら両者をうまく融合させることが重要だと考える。

 また、SNS上で今集会のロゴを巡り指摘があったことが報じられた。人は誤るし、運動体も誤る。それを自明のものとして、「何かあれば迅速に訂正してアップデートを続け、時代に沿っていく」ことが肝要だと思う。運動はまだ続く。私たちの胆力が試される。