有料

「『かわいそうな子扱い』はいや」苦しみ誰にも言えず ヤングケアラー支援考える 沖縄・那覇


「『かわいそうな子扱い』はいや」苦しみ誰にも言えず ヤングケアラー支援考える 沖縄・那覇 教室の机(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 稲福 政俊

 ヤングケアラーへの理解を深めるシンポジウム(県主催、おきなわCAPセンター共催)が2日、那覇市の沖縄大学で開かれ、当事者の大学生が登壇した。うつ病で自殺未遂を繰り返す母と暮らし、苦しみを誰にも言えずに悩んだ過去を告白。助けを求めやすい環境づくりと、子どもだけでなく家族丸ごと支援することの必要性を訴えた。

 体験を語ったのは県出身で現在は東京の大学に通う仲宗根杏珠さん(20)。父も双極性障がいがあり、両親とも精神疾患のある家庭に育った。当時は「助けてほしいとか、つらいとか気づいていなかった」という。

 小3で両親が離婚。小5で不登校になり、さまざまな大人が家庭を訪ねて来たが「母以外の大人は敵」だと感じ、相談しなかった。その間も母は自殺未遂を繰り返した。

ヤングケアラーをテーマにしたシンポジウムで意見を述べる(右から)名城健二さん、仲宗根杏珠さん、内田篤さん、崎原美智子さん=2日、那覇市の沖縄大学

 一度、伯母に「どうしたい?」と聞かれたが、「私がいないと母が死んでしまう」と思い、逃げたい気持ちをこらえて家に残ったという。
母は再婚したがすぐに離婚。その後、アルコール依存症になり、仲宗根さんのお年玉貯金を使い込むようになった。その頃から、自身の境遇がつらいものと認識して伯母の家に居候し始め、中2で母と別居した。

 養育費はなく「申し込める全ての奨学金」を利用し、高校に進学。親が精神疾患のある子の苦しみをテーマに仲間と探求活動を開始した。仲間と一緒に発起人となり「ハピんちゅOKINA輪」を設立、現在は支援や啓発活動を行っている。

 自身の体験を振り返り「介入しようとする大人はいたが『かわいそうな子扱い』をされるのが嫌だった。もっとフランクに、何でも受け止める気持ちの大きさが必要」と指摘した。

 シンポジウムは名城健二沖大教授が進行役を務め、仲宗根さんの話を中心に展開。スクールソーシャルワーカーの崎原美智子さんは「大人は焦って支援を考えがちだ。聞き取る力が大切だと思う」と話した。神森小学校の内田篤校長は、冗談を交えながら児童と信頼関係を築いた事例を紹介し「子どもや保護者の信頼を得るのはエネルギーがいる。足元からやっていきたい」と語った。
(稲福政俊)