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水飲み、食費切り詰め 物価高、単身学生ら困窮 生活保護申請急増 「相談しやすい体制を」 10万食 闇バイトの誘いも 生活保護の一歩手前


水飲み、食費切り詰め 物価高、単身学生ら困窮 生活保護申請急増 「相談しやすい体制を」 10万食 闇バイトの誘いも 生活保護の一歩手前 年末年始の主な全国生活相談などの窓口
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 新型コロナウイルス禍が落ち着いても、長期化する物価高で若者の生活は苦しいままだ。親の援助を受けられない学生は、とりわけ大きな打撃を受けている。食費を浮かすため「水でしのいでいる」「ゼリー飲料しか口にしていない」。支援団体には食料を送るよう求める声が多く寄せられている。困窮する若者たちの「SOS」を逃さない対応が求められる。 (1面に関連)
 大阪市のNPO法人「D×P」は、困窮する15~25歳を対象に1人当たり30食分の食料を月1~2回送っている。最大8万円の給付も行う。「1人暮らしで親からの仕送りがない」「学費や生活費を支払うためアルバイトに追われ、勉強する時間がない」。暮らしに余裕のない学生が多い。
 2020年のコロナ禍を機に支援を開始。送る食料はコメやうどん、カレーなどレトルト食品の他、チョコレート菓子やコーンスープも。炊飯器のない人にはパックご飯、電気を止められている人には常温で食べられる缶詰など、事情に応じてカスタマイズする。
 21~23年に支援を希望した若者1242人を対象に実施したアンケートでは、何も食べない日数が「週1~2日」500人(40・3%)、「週3~4日」56人(4・5%)、「ほとんど食べていない」18人(1・4%)で、合わせると半数近くに上った。23年度の食料支援数は10万食を見込み、23年4~8月は前年同期比で1・8倍に。担当者は「物価高で、まずは食費から削る若者が多い。食べられないと精神的にもしんどくなってしまう」と話す。 D×Pの食料支援を受けたことのある滋賀県在住の大学1年の男性(24)は「周囲になかなか相談できなかった」と明かす。ひとり親家庭で育ち、大学の入学資金も自ら働いて賄ったが、奨学金の支給開始は入学から数カ月後。物価が上がる一方、バイトの時給は変わらず、生活が成り立たなくなった。
 行政の窓口でD×Pを紹介され、食料を23年6月から3カ月間送ってもらった。8万円の給付も受け、家賃の支払いに充てた。秋から奨学金の支給が始まり、時給がより高い財務分析のバイトも見つかった。「支援があったから、ここまで来られた。将来は貧困世帯の子どもを支援する仕事に就きたい」と意気込む。
 今井紀明理事長は「困っている若者には交流サイト(SNS)で特殊詐欺など『闇バイト』に誘う声がかかることもある。行政は困窮のサインを逃さず、オンラインでの対応など若者が相談しやすい体制を整えるべきだ」と訴える。
 東京都新宿区の都庁前では12月中旬、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」などが取り組む食料配布に700人超が列をつくった。高齢者だけでなく、若者の姿も見られた。
 もやいの大西連理事長は、社会構造が変化し、家族や会社に支えてもらえずに困窮する若者が増え、物価高で状況が悪化していると分析。コロナ対策の特例貸付制度がなくなるなど「仕事や家があるのに生活保護の一歩手前の状況に陥る人も多い」という。家賃の補助など所得を底上げする政策や民間の支援活動の強化が必要と指摘している。