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「早く出して」叫ぶ子ども 炎と煙、緊迫の脱出 羽田衝突炎上 火の手一気に


「早く出して」叫ぶ子ども 炎と煙、緊迫の脱出 羽田衝突炎上 火の手一気に 羽田空港の滑走路で炎上する日航516便と逃げる乗客ら=2日午後(乗客提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日没後の暗い滑走路に降り立った機体は、乗客を乗せたまま、炎を上げた。2日、羽田空港で起きた日航機と海上保安庁機の衝突事故。着陸後の機内は煙や熱気が広がり、「早く出して」と子どもの叫び声が上がった。炎は一気に機体を包み、乗客は脱出シューターで機外へ。逃れた人々は「生きていて良かった」「安堵(あんど)して号泣した」と緊迫の脱出を振り返った。(1面に関連)
 事故があったのは午後6時前。「早く出してください」「開ければいいんじゃないですか」。乗客が動画で撮影した衝突直後の機内は、何度も必死に叫ぶ子どもの声が響いた。窓の外は炎のオレンジ一色。身ぶり手ぶりを交えて案内を繰り返す乗務員の姿は煙でかすむ。脱出シューターから降りた乗客は急いで走り、機体から距離を取った。
 「着陸した時に、いきなりボンと何かにぶつかったような、突き上げるような感じがした」と話したのは、窓際に乗っていた東京都内の女性(35)。逃れた後のターミナルで「窓から火花が見え、かがんで鼻と口をふさぐように指示を受けた。燃え出してからもなかなか出られず、脱出まで5分以上あったように感じた」と時折声を震わせていた。
 2歳の娘を連れ、夫婦で搭乗していたさいたま市の男性(33)は出火後からひどくなり続ける煙に「このままでは危険だと思った」。機内では「落ち着いてください」と乗務員のアナウンスが流れ「とりあえず子どもだけは守ろう」と娘のシートベルトを外し、床に頭を近づけて煙を吸わないようにしながら「大丈夫、大丈夫」と励まし合って脱出。「無事で良かった」と振り返った。
 妻(29)は「炎が見え、みんなパニック。煙がひどく、係員がライトで照らして、ようやく足元が見えた。苦しそうに呼吸している人もいた」と語った。
 歯科医師の40代女性=千葉市=は「機内はどんどん熱くなって、助からないかなと思った」と当時の胸の内を明かした。
 当初、機体後部の客室内に見えた炎は一気に広がり、たちまち機体全体へ。「JAPAN AIRLINES」のロゴは見えなくなり、窓やドアから炎が噴き出した。サイレンが響く中で消火活動を実施。機体は1時間ほどで骨組みも露出し、焼け落ちた。
炎上した日航516便から避難した乗客たち =2日午後7時55分、羽田空港
羽田空港の滑走路で炎上する日航516便と逃げる乗客ら=2日午後(乗客提供)