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無情の雪 阻む救助 能登半島地震 白一色、疲労濃く 「普段なら問題ないのに」


無情の雪 阻む救助 能登半島地震 白一色、疲労濃く 「普段なら問題ないのに」 大規模な火災のあった石川県輪島市の「輪島朝市」付近で、両手を組み捜索活動を見守る女性=8日午後4時33分
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 雪で覆われたがれきに向かい、被災者が静かに手を合わせた。8日、最大震度7の地震発生から1週間となった能登半島。犠牲者は日々増え、積雪が救助や支援を阻んで苦難が続く。多くのひつぎを目に、葬儀関係者も「災害のむごさを実感している」。本来なら新成人を祝う祝日。晴れ着姿を撮れなかった写真スタジオの店主は無事だったカメラを手に「負けられない」と前を向いた。 (1面に関連)

 被災地は本格的な降雪に見舞われ、白く染まった。救助隊は雪に隠れたがれきやぬかるんだ足場と格闘しながら活動を続けた。雪に慣れているはずの住民らも「普段なら問題ないのに」とため息を漏らす。疲労をにじませ、黙々と自宅の応急手当てに追われた。
 地震後の火災でほぼ全域が焼失した石川県輪島市の「輪島朝市」では黒く焼け焦げたがれきの上に白い雪が積もった。多くの消防隊員が連絡の取れない安否不明者を捜索。女性が祈るように手を合わせて見守っていた。
 土砂崩れでつぶれた住宅に取り残された人がいるとみられる穴水町の現場は、くるぶし付近の高さまで積もり、全容が見えない救助活動となった。時折現れる日差しが雪を解かし、足元をぬかるませた。
 地震後初の積雪となった志賀(しか)町では、堀岡実さん(58)が「雪だけなら問題ないのに、こんな状況で片付けとは」とやるせない表情で雪かきをしていた。傷んだ自宅は雪の重みで時折きしみ、「揺れが落ち着いても、崩れないだろうか」と不安げだった。
 雪がちらつく中、外壁をシートで覆う作業を家族と進めていた同町の道筋巳代治さん(83)は「風が入らないようできる限りのことをする。耐えていくしかない」と歯を食いしばった。
 道行く車両は雪に隠れた割れ目にはまらないよう慎重な運転を強いられた。七尾市から穴水町に至る山あいでは、タイヤを空転させながら坂道を上る車もあり、流れは滞りがちになった。
 一方、寒さが強まる中、久々の入浴に笑顔を取り戻した被災者も。志賀町で無料開放された入浴施設を訪れた田口サツ子さん(94)は「体がぽかぽかした」とつかの間の休息を味わった。