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寒さ過酷、関連死増恐れ 能登半島地震 備蓄不十分な自治体も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震の被災地は2月にかけ過酷な寒さが予想される。政府は9日に閣議決定した予備費を活用し、毛布や石油ストーブなどの供給を加速する構えだ。しかし物資不足は深刻。この日は石川県が避難生活などを原因とする関連死6人を確認したと初めて発表した。低体温症などで今後、増える恐れもある。事前の対策が不十分だった自治体もあり、専門家は、寒さを考慮した備蓄の重要性を強調している。 (1面に関連)

氷点下

 石川県志賀(しか)町の会社員山本政人さん(66)宅では瓦が剝がれ、雪が住宅の屋根に染み込み雨漏りするようになった。「ブルーシートをかけられた家はまだまし。みんな諦めの境地」と話す。同町の給水所を訪れた80代男性は「窓も割れて寒く、せめてお風呂に入って温まりたい。そんな日はいつ来るのか」と嘆いた。
 真冬の被災者は、寒さと闘わなければならない。被害が大きかった輪島市の1月の平均気温は3・3度。積雪も多く、最低気温が氷点下を記録する日もある。これから2月半ばにかけては、さらに気温が下がる。
 2011年の東日本大震災では、津波で助かったのに、寒さで命を落とした人もいた。「避難所・避難生活学会」は、能登半島地震発生直後に出した緊急声明で、避難所などに十分な暖房がない場合、高齢者を中心に低体温症の危険性があると注意喚起。「上着の中に新聞紙を詰める」「温かい飲み物を飲む」といった対策を紹介した。
 政府は、23年度の予備費から被災者支援のため約47億4千万円の支出を閣議決定。寒さ対策として、石川県の被災市町向けに、石油ストーブ約100台や毛布約3万枚、冬用の衣類約3千着、使い捨てカイロ約25万個を、金沢市の物資集積拠点まで送る。被災自治体の細かい要望を待たず、物資を届ける早さを最優先した「プッシュ型支援」の考え方だ。 

毛布なし

 松村祥史防災担当相は9日の記者会見で「全力を挙げ、現場のニーズを柔軟に捉えながら対応をしている」と強調。被災者を環境の悪い避難所からホテルや旅館に移す「2次避難」にも力を入れるとした。
 自治体の備蓄にも課題が残った。石川県七尾市の指定避難所の体育館には、多い時で約400人が避難していたが、食料や毛布の備蓄はなかった。避難所の担当者は「市はこれだけ大規模な災害を想定していなかったのかもしれない」と振り返る。
 市内の別の避難所で過ごした女性(73)は「着の身着のまま逃げたが、雪が降る地域の避難所には毛布くらいあると思っていた」と困惑する。
 日本赤十字北海道看護大の根本昌宏教授(寒冷地防災学)は「寒冷対策を考慮した避難所の備蓄ができている自治体は少ない」と指摘。国に対しては「プッシュ型で物資を送るだけでは、必要な場所に分配する余力がない被災自治体は混乱してしまう」として、専門的な知識のあるボランティアなどを一緒に派遣する必要があると訴えた。