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遺族、悲しみ消えず 京アニ死刑判決 「妻も納得してくれる」 判決に涙、複雑心境も


遺族、悲しみ消えず 京アニ死刑判決 「妻も納得してくれる」 判決に涙、複雑心境も 閉廷後、取材に応じる寺脇(池田)晶子さんの夫=7日午後、京都市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 36人の命を奪った青葉真司被告(45)に極刑の判断が下された。25日、京都地裁で言い渡された京都アニメーション放火殺人事件の判決。被害者遺族や知人は「当然だ」と安堵(あんど)し、「やったことをかみしめて」と望む。だが大切な人は戻らず、悲しみは消えない。被告は宣告を身動きせず聞き、無言で法廷を後にした。 (1面に関連)
 人気作「響け!ユーフォニアム」などでキャラクターデザインを担当し京都アニメーションを支え続けた寺脇(池田)晶子さん=当時(44)=の夫(51)は25日、法廷に臨み、判決を直接聞いた。小学6年の長男と亡き妻に報告したいと考えたからだ。死刑を聞いた瞬間、涙がこぼれた。「晶子も納得、理解してくれる内容で安堵した」。ただ、区切りを迎えたという実感はない。「晶子は浮かばれるのか。長男が前を向けるのか。不安もある」と複雑な心境も抱く。
 2019年7月の事件直後、小2だった長男の将来が心配で頭がいっぱいになった。何度も現場を訪れて手を合わせ、母親との別れを認識させようとした。のびのびとした子育てを望んだ妻に心の中で相談しながら、あえて長男に「前を向け」と厳しく接した。成長した長男はいつしか医師を目指し勉学に励むようになっていた。
 23年9月、裁判が開始。仕事と子育てを抱えながら足を運び続けた。公判終盤の12月6日、自ら法廷に立ち、夜通し練った質問をぶつけ、青葉真司被告(45)から「申し訳ない」との言葉を引き出した。罪に向きあった謝罪とは思わなかったが「自分がやるべきことはできた」。2人への義務は果たせたと感じた。
 25日の判決公判閉廷後、判決に関し「被害者の思いに寄り添っていただいた内容だった」と涙ぐんだ。
 今、被告に言いたいことがある。遺族や友人も苦しんでいることをしっかりと受け止め、「自分の犯したことをかみしめてほしい」。
 判決公判では妻の氏名が読み上げられた。「つらかった。今更ながら(妻は)やっぱり死んでしまったのか」と声を震わせた。「晶子はもっとアニメを描き、もっと子どもの成長を見たかったと思う。無念は晴れないだろう」