マスコミの「忖度」本当はどうなの? ジャニーズ問題、セクハラ、性暴力被害 記者とユーチューバーが議論 那覇・沖縄


マスコミの「忖度」本当はどうなの? ジャニーズ問題、セクハラ、性暴力被害 記者とユーチューバーが議論 那覇・沖縄 メディアによる「忖度」をテーマに、報道の在り方を見直した「報道ティーチイン」=12日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 小波津 智也

 旧ジャニーズ事務所の性加害が社会問題となり、マスコミ業界の芸能界や政治に対する「忖度(そんたく)」が改めて指摘され、メディア不信が高まる中で報道の在り方を見直そうと、県マスコミ労働組合協議会などによるトークイベントが12日、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。現役の記者らがメディアの構造やジェンダーに関する問題などを議論し、忖度がなく社会に役立てる言論機関をどのようにつくるか考えた。

 ジャニーズ問題について、琉球新報編集局暮らし報道グループの南彰記者は、「当事者の訴える内容を調べるということを当局に委ね、ジャニーズとややこしいことを起こしたくないという忖度が相まって、信頼を失墜する事態を招いてしまったのではないか」と語った。

 デジタル社会で、読者との関係が双方向コミュニケーションによる水平型が求められているものの、「新聞社の変化が遅い」と批判。男女共同参画への対応も進まず、読者の支持が得られにくい状況になっているとの見方を示した。

 元毎日新聞記者でジャーナリストの吉永磨美さんは2018年に財務事務次官による女性記者へのセクハラが問題となった件に触れ、「(以前から)当局との関係を保ちたいがために(被害者の記者に)『黙っとけ』と言うようなことがあった」と強調する。「ネタを取りたいがゆえに人権を軽く捉えている」とし、人権を軽視する構造がマスコミ業界にあるとの見方を示した。

 メディアが男性優位な職場だとし、「男性記者の多い政治経済の部署のニュースがすごいと言われ、(女性記者が多い)生活関連は書きづらい状況がある」と指摘。少数側の意見を取材すると「偏向している」と言われ、多数側に忖度するような記事を書かされることがあると主張した。

 お笑い芸人でユーチューバーのせやろがいおじさんは、自身が出演したTBSの番組に関するエピソードを紹介した。元TBS記者による性暴力被害を公表したジャーナリストについて、番組で取り上げようとして断られ、その経緯も含めユーチューブに公開した。「仕事が来ないかもと忖度する選択肢もあったが動画を出した」と振り返り、「これを面倒くさいやつと思うのか、内部からこれはおかしいと捉えるのか。そこに組織の度量が問われている気がする」と話した。 (小波津智也)