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琉球の工芸技術立証 重文指定 歴史の苦難越え返還


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国の重要文化財に指定される県立博物館・美術館(おきみゅー)保管の「金銅雲龍文簪(こんどううんりゅうもんかんざし)」は、カブと呼ばれる直径10・8センチの飾り部分と、髪に差す茎(くき)部でできており、全長は27センチ。カブの側面には玉を手に持つ2頭の龍を、手工具の鏨(たがね)を用いて立体的に彫られている。かんざしは銅製で表面に鍍金(ときん)(メッキ)が施されている。 (1面に関連)
 金銅雲龍文簪は王府の正史「球陽」に記されている聞得大君と王妃が身に着けた「黄金龍花大簪(おうごんりゅうはなおおかんざし)」に当たる。漆工芸など王府伝来の遺品に多く見られる「天」の字を形象化した印が刻まれている。
 かんざしは戦前、中城御殿に保管されていたが沖縄戦の最中に米軍人により持ち去られ、戦後は一時行方不明となった。1953年に『おもろさうし』などと一緒に沖縄へ返還されるなど、苦難の歴史をくぐり抜けた。50年代に入り海外へ流出した文化財の返還運動が盛んになる中、米国へ移民として渡った県出身の吉里弘さんらが米国内の関係者に掛け合い、沖縄の人たちが返還を望んでいることを訴え続けた。その結果、53年5月のペリー来琉百年祭で、かんざしを含む文化財53点の返還が実現した。
 金属工芸の専門家で、同かんざしの復元作業にも携わった京都国立博物館名誉館員の久保智康さんは、復元作業において薄い板を立体的に打ち出す作業はかなり高度な技術が必要だったと振り返る。かんざしは見た目の美しさだけでなく、軽量化を図るなど実用性も兼ね備えた一級品だと指摘。「琉球王府の金工技術のレベルの高さを改めて立証している。琉球史研究の貴重な史料として、後世に伝えていくべき作品だ」と述べた。
 玉城デニー知事は「大変うれしく思う。今後とも、文化財の保存・教育普及に努めていきたい」とコメントを発表した。
(当銘千絵、高橋夏帆)