有料

琉球絵画史の研究躍進へ 田名真之氏(県文化財保護審議会長)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 御後絵に関する情報は、これまで鎌倉芳太郎が戦前に撮影したモノクロ写真や文献などしかなかったが、今回実物が見つかり県へ返還されたことで色彩まで把握できるようになった。約160センチの実物からは、写真や文献だけでは確認できなかった細かな情報を読み取れる可能性もある。
 琉球絵画史研究の躍進に寄与するだけでなく、琉球王国時代そのものの研究の一助になるはずだ。
 御後絵は国王の死去から間もなく、その時代に最も優れた絵師が死に顔を描き絵画を仕上げる、琉球王国独自の文化だと言われている。時代の経過とともに何度も描き直されたり、修復を繰り返したりしたはずだ。実物が手元に戻ったことで顔料の分析も可能となるため、修復歴などをたどることで時代背景も見えてくるだろう。
 沖縄戦で多くの文化財が国外へ流出したが、それらの価値を理解し、返還に向け粘り強く尽力した方々と、戦前の沖縄を多角的にフィルムに収めた鎌倉へ敬意を払いたい。今回の返還実現を受け、他の流出文化財の発見・返還が加速することに期待したい。 (琉球近世史)
  (談)