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水俣病訴訟 原告敗訴 熊本 一部認定も除斥期間経過


水俣病訴訟 原告敗訴 熊本 一部認定も除斥期間経過 水俣病特別措置法に基づく救済策で対象外となった人たちが国などに損害賠償を求めた訴訟の判決で請求が棄却され、熊本地裁前で「すべての水俣病被害者の救済を」と訴える原告側の弁護士ら=22日午前
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2009年施行の水俣病特別措置法に基づく救済策の対象外となった144人が水俣病の典型的症状を訴え、国と熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は22日、請求を棄却した。25人の罹患(りかん)を認めたが、損害賠償請求権が消滅する20年の除斥期間が経過したと判断。原告全員を水俣病と認めて国などに賠償を命じた昨年の大阪地裁判決と判断が分かれた。原告側は控訴する方針。
 品川英基裁判長は判決理由でメチル水銀への暴露状況や発症時期などから25人の罹患を認定した上で潜伏期間は暴露からおおむね10年以内と指摘。除斥期間の起算点は発症時とした。
 不知火海(しらぬいかい)(八代海)の汚染はメチル水銀の排出が停止された1968年までとし、78年までには発症したため、既に20年の除斥期間は過ぎたと結論付けた。
 罹患認定を巡っては、約8割を水俣病と認めなかった。民間医師による診断書の所見だけでは信用性に乏しく、公的検診などで同様の症状が現れている必要があると厳格に判断した。
 長年水俣病の診療に当たってきた民間医師が策定した「共通診断書」に関し、水俣病の主要症状の感覚障害に関する検査は被検者の主観に頼らざるを得ず、所見の変動があることなどから「共通診断書の提出のみでは一貫性、再現性が確認できず、感覚障害を認めることができない」とした。