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住民犠牲に「ノー」 うるま訓練場断念 地元「ほっとした」 国の進め方 改めて憤りも


住民犠牲に「ノー」 うるま訓練場断念 地元「ほっとした」 国の進め方 改めて憤りも 旭区公民館の看板を横に安堵(あんど)の笑みを浮かべる石川修会長=11日、うるま市石川
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊訓練場を整備する計画を巡り、木原稔防衛相は11日、断念を表明した。地元自治会の全会一致の反対決議から始まり、断念を求める住民の声は島ぐるみの様相を呈した。自分たちの声が国に届き、要望が実現したことに、住民らは達成感や安心感に包まれた。

 旭区自治会の石川修会長は初めて計画を知った日のことを思い出す。「この場所になぜ」。昨年12月20日、訓練場の整備計画を報道で聞き、一瞬耳を疑った。

 旭区は住民が家族ぐるみの付き合いで、夏はエイサーやホタル観察、冬は皆で辺り一帯をハイキングする。人と自然が共存する地域に突如出た話に、地域住民は危機感を募らせた。

 年明けに開かれた臨時総会では参加した114人全員が反対の意を示した。その後開かれた防衛省の住民説明会では「なぜこの地なのか十分な説明がなかった」と計画ありきな態度に反対の思いは強まっていった。

 石川さんは「区域の住民が『この場所には造らせない』と一丸となって動いた。その思いは旭区にとどまらず、大勢が集まる市民集会にまで続いた」と振り返る。防衛省が断念するというニュースを聞き「国はやっと決断してくれた」と安心した表情を見せた。

「ほっとした」と胸をなで下ろす石原昌二所長=11日、うるま市石川の県立石川青少年の家

 県立石川青少年の家の石原昌二所長は「本当に良かった」と胸をなで下ろした。この日も県内の中学生が施設で研修していた。自然豊かな中で生徒は絆を深め、成長していく。「騒音が来ると自然環境も崩れる。断念されてほっとした」と語った。

 計画が持ち上がった時「防衛省は(青少年の家の)利用頻度や利用のされ方を全く知らない」と危機感を抱いた。施設では年間で延べ約4万人が利用する。利用状況をまとめた表を作成し、市内の人々や沖縄防衛局にも説明をしてきた。

 予定地周辺の調査もせず、地元への相談なしに計画を進めた防衛省のやり方に「そこに住む人たちの顔、生活をよく見てほしい。なんでもできると思わないでほしい」と憤る。

 この日、県立青少年の家では今年初めてアカショウビンの鳴き声が聞こえた。「訓練場が来ていたら野鳥の声もかき消されていた。子どもたちの成長の手助けができた」と笑みがこぼれた。

 (金盛文香、玉城文)