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日本人の祖先、3系統か 理化学研究所が「ゲノム」分析 沖縄に多い「縄文系」や「関西」「東北」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 現代の日本人約3200人分のゲノム(全遺伝情報)の分析から、日本人の祖先は三つの系統に分けられる可能性が高いことが分かったと、理化学研究所などのチームが17日付の米科学誌に発表した。従来唱えられてきた「日本人の祖先は縄文人と弥生人の2系統」という仮説に疑問を投げかける内容。
 従来の説では、狩猟民族である縄文人と弥生時代に大陸から移住した渡来人が混血したとされる。一方で、日本人の祖先は3系統であると示唆する研究はこれまでもあったが、遺跡から出土した人骨のゲノムを解析しておりサンプルが少なかった。今回、現代人のゲノムで大規模な解析ができたことで「3系統説」がより確からしくなった。
 チームは、多くの人の血液や遺伝情報を集めて保存している組織「バイオバンク・ジャパン」のデータを活用。北海道、東北、関東、中部、関西、九州、沖縄の医療機関に登録された日本人約3200人分のゲノムの特徴を分析した。
 その結果、日本人の祖先は主に、沖縄に多い「縄文系」、関西に多く、古代中国の黄河周辺にいた漢民族に近い「関西系」、東北に多く、さまざまな要素が混ざっていて詳しい由来が分からない「東北系」の三つに分けられると分かった。
 縄文系の遺伝情報の割合は沖縄に次いで東北で多かった。一方、関西では最も低かった。
 東北系は沖縄・宮古島の古代日本人や4~5世紀頃の朝鮮半島の人に近い。かつて東北に住んでいた「蝦夷(えみし)」と呼ばれる人々とも関連している可能性があるという。
 理研の劉暁渓上級研究員は「東北の言語は、地理的に離れた島根県の出雲地域の言語と似ていると言われる。今後の解析で、朝鮮半島や大陸に近い出雲と東北の関係が見え、東北系の由来が分かったら面白い」と話す。
 ゲノム 生物の持つ全ての遺伝情報のこと。一部のウイルスを除く多くの生物では、DNAの配列で保存されている。ゲノムのうち、特に酵素などのタンパク質の情報を担う部分を「遺伝子」と呼ぶ。