【南部】糸満市と南城市、八重瀬町は4月30日、那覇市の県市町村自治会館で開かれた「沖縄振興拡大会議」で、戦争遺跡の取り扱い指針の制定を県に要望した。2015年に県が調査把握した戦争遺跡は1077件で、遺跡を「埋蔵文化財とする方向が望ましい」と結論付けている。一方、どのようなものを戦争遺跡として扱うかなど、具体的な対象範囲について指針はない。
糸満市では昨年、自然壕「シーガーアブ」隣接地の開発を巡り、シーガーアブのどこまでを埋蔵文化財と見なすか、市と県の見解が分かれた。範囲の認識が異なることで、埋蔵文化財の取り扱いに対する齟齬(そご)が、両者で生じている。
糸満市教育委員会によると、県への要望は同市が南部の他市町村に働き掛けた。同様の問題を抱える南城市、八重瀬町が応じ、3市町での要望に至ったという。
糸満市教委の担当者は「ガマや日本軍関連施設、弾痕が残る石垣など多種多様な戦争遺跡について、各市町村が個々の判断で保存や調査を実施している状況がある」と、指針作成を求めた背景を説明する。同担当者は「対象範囲や調査・保存の方法も自治体によって異なるため、県として統一性がなくなる可能性はある」と難しさを懸念する。「県と市町村担当者が意見交換する場が必要だ」と語った。
県教育委員会文化財課は「県がある程度方針を決めないといけないが、戦争遺跡も含めて文化財の保護や活用は地元が一義的な主体者。地元と意見交換をしたい」と述べるにとどめた。
(岩切美穂、藤村謙吾)