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訪問看護大手 過剰請求か 精神科「あやめ」全社的に


訪問看護大手 過剰請求か 精神科「あやめ」全社的に 「ファーストナース」に勤めていた看護師が2021年に上司から受け取ったLINE(ライン)メッセージ(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 精神科の訪問看護事業者で最大手とされる「ファーストナース」(東京)が、患者の症状や必要度に関係なく、可能な限り訪問回数を制度の上限である週3回にするよう全社的に看護師らに指示していたことが5日、分かった。共同通信の取材に約10人の現・元社員が「3回は必要ない患者も多い」などと証言、過剰な診療報酬の請求に当たる可能性がある。社内のLINE(ライン)メッセージや内部資料も入手した。
 同社はここ数年で急成長し、「あやめ」という名称で東北から中国地方まで18都県で約240カ所の訪問看護ステーションを運営。利用者は主に精神障害者で、1万人前後いるとみられる。診療報酬の過剰な請求は架空請求などの不正とは異なるが、報酬は税金や保険料で賄われているため、国民負担が必要以上に増えることになる。
 専門家は「事実であれば不適切だ」としている。同社は取材に対し「症状などに鑑み、利用者に訪問回数の増加を提案することはあるが、(社員に)一律に指示することはない」と答えた。
 同社は2010年設立。民間信用調査会社によると、17年から訪問看護事業を始め、年間30~50カ所のステーションを開設して事業を拡大してきた。23年度の事業規模は推定約50億円。
 1週間の訪問回数は本来、看護の必要度などに応じて看護師が判断する。だが、社員らによると、同社では必要性に関係なく経営陣が訪問を週3回に増やすよう指示しているという。
 訪問時間についても31~35分にするよう指示。制度上、原則30分以上とされているが、看護師らは長い時間いないよう求められたといい、「訪問件数と売り上げを増やすため」と話す。会社側は「35分はあくまでも目安だ」としている。
 社員らによると、経営陣は株式上場を目指す考えを示した昨年ごろから、売り上げや利益を追求する方針を強化。売上額が低かったり、訪問時間の指示を守らなかったりするステーションは会議で経営陣から責められ、売上額や訪問数が多いと、手当金やブランド品が与えられるという。