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支援者ら「偏見だ」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 知的障害者の臓器提供の意思表示を一律無効とした日本臓器移植ネットワークの運用に、当事者を支えてきた団体や医師らから「偏見だ」「本人の意思が尊重されるべきだ」との批判が相次いだ。意思表示の前提として十分な説明と正しい理解が不可欠で、丁寧な対応が重要との指摘も出た。
 「いつの時代の話なのかと思った」。当事者や家族を支援する社会福祉法人「大阪手をつなぐ育成会」の小尾隆一常務理事はあきれ返った。法令で障害者を資格や免許の対象から排除する「欠格条項」が裁判などを経て見直され、障害者の権利が回復されてきた歴史があると指摘する。
 実際には知的障害の軽重には幅があり「軽度の人は移植の判断もできると思う。当事者を『一人前』として扱わなかった過去の対応と同じで、ネットワークはあまりに無理解だ」と憤った。
 精神医療が専門の長谷川利夫杏林大教授も「正しい判断ができないという間違った前提に立った明らかな偏見だ」と批判した。
 臓器提供の現場に詳しい岡山大病院の中尾篤典高度救命救急センター長は、知的障害の療育手帳を持つ人の意思表示は困難と判断されることが多いが、意思表示が可能と判断できる人が臓器提供を希望するケースもあるといい「一律に判断能力がないと扱うのはおかしい。今後は正しく運用されてほしい」と訴えた。