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膵臓がん、生存率向上を 高知大、2種類治験開始へ


膵臓がん、生存率向上を 高知大、2種類治験開始へ 膵臓がんでの二つの治験(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 がんの中でも発見が難しく、5年生存率が約1割とされる膵臓(すいぞう)がん。高知大の谷内恵介准教授(55)=消化器内科学=の研究チームが、新たな薬の実用化を目指し、臨床試験(治験)に乗り出した。医療ベンチャー企業も設立し、5年生存率を最終的に約6割まで向上させることを目指す。「患者のために治療薬を必ず創りたい」と語る。
 国立がん研究センターによると、2019年時点の膵臓がんの患者数は約4万4千人。初期の段階では症状が出にくく早期発見は簡単ではない。一般的にはできるだけ切除による治療を目指すが、発見が遅れると手術が難しくなるという課題があった。
 治験は2種類実施する。一つは既存薬を活用したもの。マウスの実験でがんが広がるために必要な「足」の作製を抑制する効果が確認されており、人にも有効かどうかを確かめる。もう一つは遺伝子に働きかける「核酸医薬」という薬による治験。がん細胞内に入り、タンパク質を作るために必要なリボ核酸(RNA)を壊すことで、周りに広がることを抑える。
 高知大を含む5施設で実施予定。抗がん剤治療は実現まで少なくとも7年、核酸医薬は10年ほどかかる見込みだ。切除ができない中期のがんへの適用も見込まれる治療法で、生存率向上につながると期待される。
 谷内さんはさらに、早期発見に向けた検査キットの開発にも着手している。ベンチャー企業を立ち上げ、高知銀行などが設立したファンドからの投資も決まった。「膵臓がんは重い病で治療が大変という情報を患者さんは知っているので、診断したときの失望が非常に大きい。研究を進めることで希望の光を大きくしていきたい」とした。