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保護司 立ち直り支援の担い手


保護司 立ち直り支援の担い手 保護司の人数と平均年齢の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大津市の保護司殺人事件で、亡くなった新庄博志さん(60)は過去の事件で有罪判決を受けて保護観察中だった飯塚紘平容疑者(35)を1人で担当していた。保護司は罪を犯した人の立ち直りを支える、更生保護の要。しかし対象者を自宅に招くため家族に反対されることもある。有識者は「自宅以外でも面談ができるように国が制度改革する必要がある」と話している。

 ■不安
 「重大な案件が起きてしまった」。大津保護観察所の宮山芳久所長は同日、大津市内で急きょ開いた記者会見でこう述べ、県内全ての保護司に対し、不安なことがないか聞き取り調査をすると明らかにした。
 大津保護観察所によると、新庄さんは2006年から保護司として活動。熱心に更生支援に取り組み表彰歴もあった。新庄さんは飯塚容疑者を1人で担当し、基本的に保護観察対象者との面談を自宅で行っていた。
 保護司は法相が委嘱する非常勤の国家公務員で、報酬はない。対象者の近くに住む保護司が担当を務めることが多いとされる。月2回程度、対象者の相談に応じたり就職支援をしたりしている。保護司会の施設や公民館でも面談できるが、自宅に招く保護司もいる。
 大津保護観察所では、対象者と関係が悪化している場合は複数人で面談したり、保護観察所が介入したりしている。

 ■反対
 保護司は23年1月現在、全国で約4万7千人が活動しているが、20年前に比べて約2200人減少。担い手不足が深刻で、高齢化や家族の反対などが原因とされる。
 京都市山科区で保護司をする馬渕利幸さん(60)は「家族の理解がないとできない」と、活動の難しさを語る。平日に時間が取れないと保護司になりにくい実情もある。
 矯正行政に詳しい龍谷大の福島至名誉教授(刑事法)は保護司について「『地元の名士が自宅で面談する』という昭和のイメージから変わっていない」と指摘。保護司会の施設が使えない日の面接場所の確保など、国は柔軟な活動の援助を検討すべきだと訴えた。