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「患者の数値悪く」指示 訪問看護「あやめ」 報酬減算逃れか


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 精神科の訪問看護で重度の患者数が少ない場合は診療報酬を減らす仕組みが本年度に導入されたことを受け、最大手とされる「ファーストナース」(東京)社内の一部で、患者の状態の数値を悪く記すよう指示が出ていたことが2日、分かった。複数の社員が「会社が数値の見直しを指示したことを受けたもので、減算を免れる目的だ」と証言。社内のLINE(ライン)メッセージや内部資料も入手した。
 数値を一斉に大幅に引き下げたステーションもあった。
 同社は「あやめ」という名称で東北から中国地方まで訪問看護ステーションを約240カ所運営。取材に対し「一律に数値を引き下げる指示は一切行っていない」としている。同社を巡っては「必要性に関係なく訪問回数を増やすなどして、過剰に診療報酬を請求していた」との指摘が既に出ている。
 厚生労働省は本年度の診療報酬改定で、精神科の訪問看護を巡り、各ステーションの患者のうち、精神疾患の状態を表す「GAF」という数値が40点以下の人が月に5人以上いない場合は、報酬を一部引き下げる仕組みを導入。2月に発表され、6月に施行された。GAFは数値が低いほど状態が悪いことを意味し、看護師が点数を付ける。
 社員の証言や社内のLINEメッセージによると、同社は4月以降、GAFの点数見直しを指示。一部地域では、41点の場合は40点にするよう求める指示が出ていた。厚労省は「事実であれば、不適切だ」としている。
 別の地域のあるステーションでは、5月時点では患者約40人のうち40点以下は1人もいなかったのに、6月に一斉に引き下げられ、ほとんどの人が40点以下になった。

<用語> ファーストナース 飲食や不動産、介護事業などを手がけていた松本智(さとし)氏が2010年に設立した株式会社。本社は東京都港区。社長は橋本真奈歩(まなぶ)氏だが、松本氏が事実上のトップ。精神科に特化した訪問看護ステーションを17年から始め、急成長。宮城から広島まで19都県で約240カ所を運営しており、利用者は1万人前後いるとみられる。民間信用調査会社によると、23年時点で社員数は約1300人。診療報酬の過剰請求が指摘されている問題では、厚生労働省が事実関係を調査している。