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海自潜水艦乗員に金品か 川崎重工 十数億円流用疑いも


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 海上自衛隊の潜水艦の修理事業を受注した川崎重工業が、下請け企業との架空取引で簿外資金を捻出し、潜水艦の乗組員に金品や物品を提供していた疑いがあることが3日、分かった。防衛省と川重が同日発表した。川重によると、不正な資金捻出が始まったのは遅くとも6年前で、流用した額は少なくとも十数億円に上る疑いがある。
 乗組員にとって川重社員は利害関係者に当たり、事実と認められれば、自衛隊員倫理法に基づき懲戒処分になる可能性がある。防衛省の担当者は「疑いがあることを真摯(しんし)に受け止め、全容解明に向けて調査を進めている」と述べ、結果がまとまり次第公表するとした。
 防衛省によると、海自潜水艦の約半数に当たる12隻を川重が製造。3年に1回の定期検査などのほか、臨時の修理も担っている。潜水艦が配備されている神奈川県の横須賀地方総監部と広島県の呉地方総監部が随意契約で発注しており、近年の契約金額は年間約百数十億円という。
 川重によると、海自側と川重側がともに数カ月にわたって行う修繕作業で不正があった。コミュニケーションを図る目的で懇親会を開く慣習があり、川重は、それらの費用に充てるため不正がエスカレートしていったとみている。
 大阪国税局による川重への税務調査で発覚。今年4月、川重から防衛省に連絡があり、調査を開始した。
 川重も特別調査委員会を設置して調べを進め、年内の取りまとめを目指す。橋本康彦社長はコメントで「ご心配をおかけし、心からおわび申し上げる」と陳謝した上で「本件を重く受け止め、真相解明と合わせてコンプライアンス、ガバナンス強化に向けて体制改善に努めていく」とした。