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ハンセン病家族 国提訴 県内男性、補償求める


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国の誤った隔離政策によって差別に苦しむハンセン病元患者の家族に対する補償を巡り、亡くなった元患者の「トートーメー(位牌(いはい))」を継いだ80代の男性が、男性を補償の対象外とした国の決定の取り消しを求める訴訟を那覇地裁に提起していたことが5日までに分かった。男性は国が定める期間から外れた時期に元患者と養子縁組したため、補償対象から外れた。

 元患者の家族らへの国の賠償を命じた熊本地裁判決から5年。補償金の請求申請件数が伸び悩むなか、「時の壁」が差別に苦しんだ遺族の救済を阻んでいる実態も明らかになった。

 訴状などによると、男性は、元患者のおいで2002年に元患者の養子となった。19年11月、元患者の親や子、配偶者に180万円、きょうだいや孫に130万円の支給を定めた家族補償法が施行されたことを受け、20年12月に補償認定を受けるための請求を行った。しかし同法は、ハンセン病患者の隔離政策の根拠法となっていた「らい予防法」が廃止された1996年3月までに親子関係のない家族については補償の対象としておらず、厚生労働省が男性の請求を棄却した。

 元患者と生前から「親子としての交流、関係性」を深めて死後にトートーメーを継いだ男性は「事実上の親子関係が存在していた」と主張。元患者が男性と養子縁組をしなかったのは、「偏見差別を受けることを回避するため」だったとし、「不平等な法的処分」として厚労省の処分取り消しを求めた。

 ハンセン病家族訴訟弁護団の神谷誠人(まこと)弁護士は、訴訟提起の背景について「家族補償法では補償対象の家族を法律として類型化しなければいけない側面はあるが、類型化の限界もあることが露呈した」と指摘する。

 その上で「男性の場合は、トートーメー承継という親子関係の証明もある。画一的に補償対象外とするべきではない。そもそも男性が養父と家族という法的枠組みを長く築けなかった背景にはハンセン病への偏見・差別がある。国はそうした背景も踏まえて、元患者とその家族に寄り添うべきだ」と話した。