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【動画】朝4時に開店する理容室、ハサミをふるうのは82歳「生涯現役」の理容師 沖縄


【動画】朝4時に開店する理容室、ハサミをふるうのは82歳「生涯現役」の理容師 沖縄 常連客と談笑しながらカットを進める長濵正明さん=5日、那覇市国場の「理容ブーム本店」
この記事を書いた人 Avatar photo 前森 智香子

 夜明け前の午前4時から開店し、夜勤帰りや出勤前の男性客らに人気の「理容ブーム本店」。那覇市国場の店舗で未明からはさみをふるう長濵正明さん(82)=糸満市=は、理容師歴60年を超える。「仕事が好きで毎日が楽しい。生涯現役でいたい」と笑う。

 明るい店内を赤色のハンチング帽姿の長濵さんがてきぱきと動き回る。常連客の岩崎公典さん(73)との会話は弾み、カットが終了。岩崎さんは「82歳で仕事しているのがすごいよね。励みになる」と仕上がりに満足そうにした。

理容ブーム本店の外観

 与那国町生まれの長濵さん。身長153センチと小柄で「技術を磨き、真面目に働けば報われる」と、中学を卒業後、地元の「宮良理容室」で修行。理容師になり、25歳で沖縄本島へ。那覇軍港内にある理容室にも派遣され、米兵たちのカットを担当した。「当時は毎月2回、髪形の検査日があって、その日は朝から忙しかった。1日50~60人ぐらい切っていた」と振り返る。短く刈り込む「GIカット」を多く手がけ、バリカンの技術を磨いた。

 26歳の時、那覇市宇栄原で「ウィーン理容室」を開業し、家族で営んだ。転機は53歳。妻の弟も理容師で「東京に来ないか」と誘われた。末の子どもが高校生だったため、単身で上京。仕上がりはもちろん、スピードも求められ「東京での経験が今に生きている」と話す。

 家族の事情で65歳で沖縄に戻った。仕事は引退し、妻とゆっくりと過ごすつもりだったが、ブームを経営する城間禎社長から誘いを受けた。寄宮店で勤務を始め、現在は国場の本店で働く。

開店直後に発券されたチケット。この日の最初のチケットは午前3時43分の打刻がされていた=5日、那覇市国場の理容ブーム本店

 長濵さんが異動してから、本店は午前5時オープンになった。早朝からの営業は好評で「もっと早く開けてほしい」との声があり、昨年6月から開店を1時間繰り上げた。月1回通うという飲食業の伊計真一郎さん(44)は「人が少ないかと期待して午前4時に来たことがあるが、結構混んでいた」と思い返す。

 同年代の仲間が引退した今でも開店前から午後6時まで働き、午後7時15分に就寝。午前1時過ぎには出勤する生活が続く。「理容師の道一筋でここまで来た。仕事は生きがい。辞めたら体調を崩しそう」。さびない技術で、今日も未明から接客する。

(前森智香子)