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<新垣安雄さんを悼む>高良勉(詩人・批評家・沖縄大客員教授)不条理の島 あらがい表現


<新垣安雄さんを悼む>高良勉(詩人・批評家・沖縄大客員教授)不条理の島 あらがい表現 作品の前に立つ新垣安雄さん=2016年
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 こんな追悼文は、書きたくない。約束が違うじゃないか、安雄ヤッチー(兄貴)!次の絵画個展は、いつやるのかが約束ではなかったか。不慮の事故とは言え、あまりにもの急逝で悔しくてしょうがない。

 この戦後沖縄で日米両政府による植民地支配下の不条理な社会・状況を批判し抵抗して表現活動を展開した偉大な美術家には、公私共にお世話になった。そのウンジ(恩義)への感謝は、言葉で言い尽くすことはできない。

 新垣安雄との出会いは、1979年の第8回個展「白のオブジェ」(国吉ギャラリー)を観たときからであった。それ以来45年間、新垣の個展はほぼ全部を鑑賞し何本かの展評も書いてきた。その主なタイトルは、「銀色の挑戦」(97年)、「島の根・宇宙の根」(2002年)、「弾丸と珊瑚」(10年)。そして、昨23年4月に開催された第32回新垣安雄「証言者」展への展評は「不条理の島 変革訴え」と題した。残念ながら、これが最後の個展となったが、来る5月17日からは、グループ展「前夜」(浦添市美術館)が予定されていたのに。

 新垣の活動を振り返ると、地元南風原町での地道な努力と成果を忘れることはできない。まず、何よりも共に南風原文化センターを設立し、企画運営してきた。新垣の個展の大半はここで開催された。彼はまた、「南風原の美術工芸展」を組織し、南風原文化協会の部門まで発展させてきた。さらに、南風原町の憲法九条の会依頼で「憲法九条の碑」と「鎮魂と平和の鐘」をデザインし建立した。ああ、その安雄ヤッチーと別れなければならない。哀悼・合掌。

(敬称略)
(詩人・批評家・沖縄大客員教授)


 造形美術家の新垣安雄さんは5月7日に死去、81歳。