名護市辺野古の新基地建設工事を名目に9億円の巨額出資トラブルが明らかになった。詐欺被害を訴える男性は、「協力金」名目の出資を決めた背景として、辺野古の国策事業としての側面と地元関係者の存在を挙げた。男性から出資金9億円の返還を求められている会社経営者は、辺野古の新基地建設工事への関与をほのめかし、多額の出資を募っていた。
「国の予算なので取りっぱぐれることはない」
出資を巡る交渉の中でトラブルになっている会社経営者の一言を、男性は鮮明に覚えていた。
男性は20年3月、知人を介してこの会社経営者と知り合った。取引のあった知人から「知り合いに大富豪がいる。沖縄の埋め立て事業に投資している」と聞き、興味を抱いたのがきっかけだったという。
会社経営者は、都内の高級割烹での会食の席に「コンサルティングをしている」という地元関係者2人を伴って現れた。
うち1人は、「埋め立て関連で重機のリース業を展開」していると説明した。会社経営者は「そこにカネを全部投じる。重機を国、内閣府にリースするから必ず利益が上がる」などと畳みかけ、男性に出資を促した。
会社経営者は、「協力金」名目の出資金のうち年間利率12%を「対価」として提示したという。
男性は、紹介者の知人が出資している点や、「沖縄関連事業」を展開する地元関係者の紹介を受けたことなどから出資を決めた。
男性が計9億円を投じた2020年当時は、新型コロナウイルスの感染拡大で工事の進捗にも影響が出ていた。
それでも、会社経営者は、「工事の稼働状況がどうだろうとリース事業に影響はない」と話していたという。
しかし、月ごとの「対価」の支払いが次第に遅れるように。21年8月以降は、「税務署の調査が入り、地検も動いている」などと当局の介入をほのめかすなどして支払いを回避するようになっていった。会社経営者は、男性から再三にわたる返還の求めを受け、22年6月に300万円を払ったが、「対価」と称する配当はその日を最後にストップした。
「沖縄関係の利権を保有しており、最終的にはそれで埋め合わせる」とも男性に話していたというが、約束が果たされることはなかった。
(「幻影の辺野古マネー」取材班)