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【深掘り】陸自も加われば負担「四重」 石垣でオスプレイ訓練を模索 大型選挙がないタイミング


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
普天間飛行場に駐機する米海兵隊のMV22オスプレイ=2月、宜野湾市

 陸上自衛隊が米海兵隊との実動訓練「レゾリュート・ドラゴン23」で陸自の輸送機V22オスプレイを県内で訓練させようとしている。情勢を見ながら慎重に訓練区域を拡大してきて、今回は石垣島での離着陸を模索する。知事選など大型選挙が少ないなど、県内の政治日程を踏まえながら限られた実動訓練の機会を捉えたとみられる。県内では米海兵隊のMV22オスプレイに加え、米空軍や米海軍の機体もたびたび飛来する。陸自も加われば「四重」の負担となる。危険性の増大を懸念する声が上がった。

 オスプレイについては、普天間飛行場に配備される2012年より前から、エンジン停止時にもローターが回転し軟着陸する「オートローテーション」機能の欠如といった機体の問題が指摘されてきた。防衛省関係者は「評判が悪い。理解を得られるように慎重に配備を進め、訓練も少しずつ広げてきた」と明かす。

 オスプレイは従来のヘリコプターと比べて搭載可能な容量は小さいが、航続距離や速度が2倍となる。防衛省は広大な海域を有する南西諸島での運用を念頭に置いている。佐賀県に配備するのも、離島奪還部隊「水陸機動団」のいる長崎県佐世保市などに近いという理由がある。

 沖縄をはじめとした南西地域での運用を想定して導入した機体だが、沖縄県内で飛行させたことはなかった。強い反発を予想して慎重に時期を見極めていたためだ。昨年11月の日米共同統合演習「キーン・ソード23」では、沖縄県内よりも受け入れられやすいと判断し、徳之島(鹿児島県)で日米共同でオスプレイの訓練をした。南西諸島では初めてだった。その後も徳之島で訓練を重ねた。

昨年11月の日米共同統合演習「キーン・ソード11」で、徳之島で実施されたMV22オスプレイを使用した訓練=2022年11月18日、鹿児島県伊仙町

 陸自担当者は県内に陸自オスプレイが飛来する可能性を巡り「実効性のある訓練を追求している。沖縄県内は頻繁に海を隔てて人と物を運ぶ機会があるので飛行エリアを拡大したい」と語った。

 一方、27日にオーストラリアで米海兵隊のオスプレイが墜落して3人が死亡した事故の影響も重く見る。防衛省関係者は「タイミングが悪い」と肩を落とした。「初回が重要だ。(計画を実行するかは)どの程度、反発が広がるかなど、今後の空気感による」と語った。

 防衛省は29日、海兵隊のMV22オスプレイ4機が県外の訓練計画に組み込まれている点を踏まえ「沖縄の負担を軽減する」訓練移転だと主張したが、この共同訓練では県内各地が訓練場所となる上に海兵隊のオスプレイも稼働する。

 与党県議の一人は「負担減とは、とんでもない」と憤る。死者も出る重大事故が相次いでいる点を挙げ「オスプレイが欠陥機であることは明らか。負担増で危険増だ」と語気を強めた。安全保障関連3文書に基づいて南西地域での防衛力強化を進める政府について「沖縄を戦場にする訓練だけでなく、欠陥機を持ち込む。二重三重に県民を愚弄(ぐろう)する行為だ」と断じた。
 (明真南斗、佐野真慈)

 


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