prime

【深掘り】地元にはギリギリ直前に伝達、防衛省の狙いとは 宮古島への陸自「電子戦部隊」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
陸上自衛隊の車載型ネットワーク電子戦システム「NEWS」=2019年8月25日、静岡県の東富士演習場

 防衛省は2024年度末までに陸上自衛隊宮古島駐屯地(宮古島市)を拡張し、電子戦部隊を配備する方針を8月31日に決定・公表した24年度予算の概算要求に盛り込んだ。それまで配備計画は一切明らかにしてこなかった。沖縄県民には事後報告ということになる。いったん駐屯地を設けると、後付けで機能や部隊を強化していく防衛省の姿勢が鮮明となった。

 宮古島市によると、地元である同市に電子戦部隊の配備計画が伝えられたのは、概算要求を決める直前の8月25日ごろだった。沖縄防衛局の職員2人が市役所を訪れ、市の担当職員に概算要求で電子戦部隊の配備と同駐屯地の拡張を伝えたという。

 県幹部は「最近、突然部隊配備計画が公になることが多い」と不信感をあらわにする。過去にも同様の事例がある。与那国駐屯地への地対空ミサイル部隊配備計画についても防衛省は公表せず、23年度予算に組み込んだ際にやっと明らかにした。

 駐屯地の開設などと比べ、既存施設内での「変更」は防衛省自身の判断で可能だという考えが背景にある。防衛省関係者は「事前に説明すれば納得するのか。説明することで自治体には対応する責任が生じるので逆に困るのではないか」と主張した。

 電子戦部隊は、電磁波を利用して戦う「電子戦」を専門とする。電波の周波数を分析し、作戦を有利に進めるために相手の通信やミサイル誘導を妨害する電子攻撃を行う。相手の電子攻撃を避けて自らの通信を確保する電子防護も担う。

 那覇駐屯地(那覇市)と知念分屯地(南城市)にすでに配備されており、23年度中に与那国駐屯地(与那国町)にも配備する予定だ。宮古島は4カ所目となる見通し。

 宮古島駐屯地に配備される電子戦部隊の隊員数は、与那国駐屯地などと同等の約40人。部隊の規模は比較的コンパクトなものの、防衛省は戦いの「新領域」として強化を進めている宇宙、サイバー、電磁波の一角として重視している。

 自衛隊関係者は電子戦部隊について「今やあらゆる部隊の活動には電子戦部隊がセットだ」と説明した。電磁波領域で優勢を確保することが、ミサイル部隊をはじめとしたあらゆる作戦行動に必須と考えているためだ。

 先の県幹部は電子戦部隊が次々と県内に配備されてきた経緯を踏まえ「次は(3月に陸自駐屯地が開設された)石垣島にも配備すると言うのではないか」といぶかった。自衛隊関係者は「その島だけ配備されていなければ、そこが穴になる」と語り、石垣島にも配備される可能性が高いことを示唆した。

(明真南斗、知念征尚、友寄開)