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中国側の研究者は「台湾有事」の可能性をどう見ているのか?“悪意あるワナ”“米国の台湾カード”とは<台湾有事回避シンポ>


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中国側の研究者は「台湾有事」の可能性をどう見ているのか?“悪意あるワナ”“米国の台湾カード”とは<台湾有事回避シンポ>
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9日に那覇市内で開かれた「台湾有事」の回避を目指すシンポジウム(「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクト主催)。主な登壇者の発言を紹介する。

上海市日本学会名誉会長
呉寄南氏

中国の追求は平和的統一

 台湾問題は日中関係にとって越えてはならない一線だ。アヘン戦争以降、列強勢力の侵略により、マカオ、香港、台湾は相次いで中国の領土から分離された。台湾は唯一の「流浪者」となった。中国のいかなる指導者であっても、14億人民の感情を無視し、両岸統一の旗を放棄することは不可能だ。

 「台湾有事」説は悪意のある戦略的なわなだ。2021年に安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事であり、日米安保有事である」というレトリックを唱えた。この発言は中日関係の政治的基盤を震撼(しんかん)させ、ひいては破壊する起爆剤になった。

 中国が追求しているのは、両岸の平和的統一の達成だ。武力行使の約束を放棄しないのは、少数の台湾独立勢力が正気を失い、外部の力で分離独立を図っているためだ。

 中国は今まで一度も、武力統一を唯一の選択、そして最終的目標と据えたことはない。発生確率が非常に低いこのシナリオを、すぐにでも起こりうる現実として大げさに誇張することは、中国大陸の対台湾政策に対する歪曲(わいきょく)だ。

上海国際問題研究院 学術委員会主任
厳安林氏

安倍氏発言 米覇権の利益

 「台湾有事は日本有事」。安倍晋三氏のこの発言は中国の内政に干渉し、中国の平和的統一を不可能にしようとしているのではないかと受けとめられている。日本政府が台湾海峡問題に介入・干渉すれば、両岸の統一は「平和的方式」での実現が困難になる。

 この発言は米国の覇権の利益には合致する。米国は、台湾をてこにして中国をけん制し、世界的な覇権を維持するために、中国の発展を阻止するために「台湾カード」を切っている。日本は中国攻撃の「駒」および「先兵」にしかならない。

 この発言が現実となれば、沖縄は戦争の最前線になる。従って「日本有事」は「沖縄有事」で、沖縄を戦場にし、沖縄を米国覇権の「スケープゴート」にすることだ。

 私の結論は、台湾も台湾海峡も有事にならないということだ。前提条件は日本政府が台湾海峡で問題を起こさないことだ。台湾と台湾海峡が無事ならば、日本も無事で沖縄にも問題は起こらない。そのようになれば、私たちが今日一堂に会してコミュニケーションを取った価値がある。