prime

【深掘り】県関係者「『安全』言った者勝ち」 首相指示も封印された「停止」 オスプレイ飛行継続


【深掘り】県関係者「『安全』言った者勝ち」 首相指示も封印された「停止」 オスプレイ飛行継続 閣議後の会見で記者団の質問に答える木原稔防衛相=1日午前、国会内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 鹿児島県屋久島沖のオスプレイ墜落事故から2日が経過した1日も、在沖米軍は県内でオスプレイの飛行訓練を続行した。これまで三度も「安全が確認されてからの飛行」を要請したが、明確に飛行停止を要求しない日本政府に対し、米政府は「正式な(飛行停止)要請は受けていない」(米国防総省シン副報道官)として、飛行継続を正当化。配備地沖縄で増大する懸念を無視するかのような姿勢が続く。

 「航空機事故は国民の命に直結する話だ。飛行に反対なら反対と、もっとはっきり要請すべきだ」。県幹部は国に不快感をあらわにした。

 県関係者は国が示した「安全確認」との条件に対し「原因究明を求めるなら日本側でも検証できることもあるが、『安全』は言った者勝ちではないか」と述べ、国の要請内容を問題視した。

 懸念は、開会中の県議会内でも広がる。

 米軍基地周辺の首長が相次いで「飛行停止」を求める中、同調の声は県政野党からも上がる。自民県議の一人は「基本は安全が確認されるまで飛行すべきでない」として乗組員を含む人命を最優先にすべきだと語った。

 政府関係者によると、岸田文雄首相は早い段階で「一時停止」を含む対応を米側に求めるよう指示していた。だが、申し入れでは「停止」の文言は封印された。防衛省関係者によると、政府の要請は必ずしも飛行を止めた上での安全確認を求めておらず、米軍の運用に配慮した格好と言える。

 木原稔防衛相は11月30日、ラップ在日米軍司令官を呼び会談したが、飛行停止という言葉は使用しなかった。12月1日の会見ではより強い要求をしないのか問われ「飛行に関する安全が確認されなければ、飛行しないでくれということを明確にしながら説明を求めていきたい」と述べるにとどめた。

 事故発生から一貫して米軍側に「配慮」を示してきたにもかかわらず、シン副報道官が正式な要請は受けていないと述べたことについて防衛省関係者は「何を言っているんだ。ショックだ」とがく然とした。

 米側におもねるような日本政府の要請内容に、県政与党議員の一人は「まるで属国のようだ」と吐き捨てた。事故が世界で報道され注目を集めている点に触れ「主権国家としてのプライドを示せない状況は恥ずかしいばかりだ」と強く批判した。

 (知念征尚、佐野真慈、明真南斗)