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【深掘り】「一自治会の問題じゃない」自衛隊に賛否も訓練場計画に「反対」のワケ うるま市石川


【深掘り】「一自治会の問題じゃない」自衛隊に賛否も訓練場計画に「反対」のワケ うるま市石川
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川で防衛省が計画する陸上自衛隊の訓練場整備計画を巡り、石川地区の自治会長会は1日、計画に反対することを決めた。道1本挟めば住宅地という候補地の立地に対する懸念が地域全体で共有された形だ。既存の米軍基地由来の爆音が市街地を覆う中、関係者の一人は「一自治会だけの問題ではない。地域全体で体制をつくって取り組む」と意義を語った。

 旧石川市は嘉手納基地を離着陸する戦闘機が通過するなど爆音に長年さらされ、市街地は防衛省が定める騒音コンター(分布図)で、うるささ指数(W値)75以上の区域だ。地域内では1959年の宮森小学校米軍ジェット機墜落事故で18人(うち児童12人)が死亡するなど、甚大な基地被害を受けてきた。

既にある「被害」

 隣接する沖縄市の陸自沖縄訓練場でも、防衛省は新たな補給拠点を造る計画を進める。石川地域は市街地の南北を防衛施設に挟まれる形となる。

 県関係者の1人は「(防衛省は)訓練場の適地を見つけて前のめりになり、地元説明をおろそかにした。もともと基地被害が大きな場所に訓練場を置きたいとなれば、地域が怒るのも当然だ」と語った。

 石川地区自治会長会が反対で一致したことは地域の反発の根強さを表している。同会の與古田ゆかり会長は「予定地が民家や教育施設に隣接しているため」と計画反対の理由を説明した。

 一方、さまざまな意見がある安全保障政策に対し各自治会で活動する難しさもある。今後は新たに有志の会の立ち上げも検討されており、計画反対はさらに広がる。

 有志の会に参加予定の一人は「自衛隊への賛否や温度差はあるが、静かな住宅地に訓練場が隣接することへの反対という一点でまとまろうとの話になった」と明かした。

防衛省の「思惑」

 訓練場整備計画が表沙汰になって以降、中村正人市長は賛否を示していない。1月31日、本紙の取材に「地権者と防衛省の契約に何らかの影響を与えかねないので、コメントを控えたい」と語った。

 地元で広がる反発に政府関係者は「市長や市議会による全会一致で反対などとなれば事態は複雑になるが、幸い市長は反対していない」と市長の動きを歓迎する。また「うるま市内では、防衛関連で進めたい案件が多い」として、市が計画する「総合アリーナ」整備などへの支援をてこに進めたい考えを示した。

 一方、玉城デニー知事は1月31日の会見で訓練場計画について問われ「計画ありき、予算ありきで物事が進められては、地域の安心安全な生活が成り立たない」と語り、賛否の言及は避けつつも計画に強い警戒感をにじませた。

 防衛省はヘリコプター離着陸や空砲使用、ミサイル発射機の展開訓練を想定しているという。

 県関係者は、当初は沿岸監視部隊のみとされた与那国駐屯地で、米軍と自衛隊の合同訓練が行われたり、地対空ミサイル部隊配備が計画されたりしていることを念頭に「いったん施設ができたら、後はいくらでも使える」と警戒する。今後の国の説明や自治会を含む地元の動向を注視する姿勢を示した。 (知念征尚、明真南斗、金盛文香)